5. “理想のお客さま(ターゲット)”はどこにいる? その2
ここ数年、それまであまり目にすることがなかった法律事務所の広告を、テレビや電車内で見かけるようになりました。
ほとんどは借金や過払い請求や自己破産など、お金に関するトラブルを解決しますというものですが、ネットではそれ以外にも、離婚やDVなどを専門に扱っているという法律事務所の広告を見かけます。
弁護士というと堅いイメージがありますが、バラエティ番組などでも活躍しているので以前よりも身近に感じるようになりました。それでも何か問題が起きたときには、知り合いでもいない限り、誰に相談したらいいかどうやって探したらいいのかわからない、という方が多いのではないでしょうか。
そんな中、自らもオタク(ヲタク?)という、オタクのための弁護士が登場し話題を集めています。
◆実例紹介
◎オタクの味方!? ヲタク弁護士 「神田のカメさん法律事務所」
http://www.kamesan-law.com/(別ウィンドウが開きます)
萌え系の女の子が事務所公式キャラクターをつとめるホームページ。初めて見た人はおそらく「は?」「マジかよ・・・」といった反応ではないでしょうか。
萌え系の彼女たちが「一応ホントに・・・弁護士なんです・・・」と言っているのは、「神田のカメさん法律事務所」の太田真也弁護士。メディアでもたびたび取り上げられているので、ご存じの方もいると思います。
自分のやりたい仕事だけをやろうと、「オタク」というコンセプトで事務所を立ち上げ、現在で4年目。
著作権や特許権に関する案件が中心で、クライアントは漫画家、クリエーター、アニメ関係者など。事務所の場所はもちろん!秋葉原です。
そんな「神田のカメさん法律事務所」の太田弁護士、自分を知ってもらうための打ち手として、“理想のお客さま(ターゲット)”が一同に集まるコミケ(コミックマーケット)に出展。チラシを配布し無料法律相談を行いました。
また、深夜アニメの時間帯に自作のCMを流したところ、ここでも大きな反響があったそうです。
CMはYouTubeでも見られるので、ネット上でも“理想のお客さま(ターゲット)”に対して認知度を上げるのに有効です。お堅いイメージの弁護士さんたちの中で異彩を放っているので話題にもなるし、オタクの人たちからは絶大な支持を集めるのではないでしょうか。
なんたって自分自身がオタクですからオタクの気持ちが誰よりも(他の弁護士よりも)わかります。他の弁護士にはなかなか真似できないですよね。
弁護士広告については、日本弁護士連合会の規定でこれまで広告を出すことを禁じられていたのが、2000年の規制緩和により原則自由になりました。また法律事務所も数が増えすぎてどこも顧客獲得が難しい、というのが背景にあるようです。
それなのに、弁護士業界は保守的な人が多いのか、どこの法律事務所も似たようなHPで似たような集客というのが現状のようです。(あれ?なんだかどこかの業界と似ているような気が・・・)
【参考】
◎帰ってきた弁護士独立開業マーケティング
http://d.hatena.ne.jp/ypartner/20120805(別ウィンドウが開きます)
弁護士と並んで堅いイメージの士業といえば、税理士や公認会計士があります。
では税理士や公認会計士はどうやってお客さまを探すのかというと、最近では紹介事業というビジネスがあります。
そのビジネスモデルは、ネット上で紹介サイトを運営し、たくさんの税理士、会計士に登録してもらってお客さまにあった税理士、会計士を無料で紹介。契約が決まったら、登録税理士、会計士から仲介手数料をとるというもの。間に入る担当者は、コーディネーターやコンシェルジュと呼ばれています。
すでにたくさんの紹介サイトが存在し、紹介サイトの中でも登録人数をアピールしたり、独自の基準を設けて数よりも質を訴求したりと、税理士を選ぶ前にどの紹介会社を選んでいいのかわからない!・・・という状態になっています。
仲介手数料が負担となるため、できれば紹介会社に頼らずにお客さまをとりたいというのが税理士さんたち共通の思いのようですね。(あれ?これもどこかの業界と似ているような気が・・・)
今回の話は、何も建築家も広告を打ちましょう、営業しましょうという話ではありません。
“理想のお客さま(ターゲット)”が具体的になると、プロデュース会社に頼る以外にも“理想のお客さま(ターゲット)”がいる場所が見つかるので打ち手を考えることができる、ということです。
弁護士も公認会計士も税理士もそして建築家(建築士)も、目に見えないソフトを売るという点では共通です。そしていずれも、お客さまが来て契約してはじめて成立する仕事です。
建築とは普段あまり縁のない世界ですが、同じ士業という点で何かヒントが見つかるかもしれませんね。
さて、あなたの“理想のお客さま(ターゲット)”はいったいどこにいるでしょうか。
そのお客さまはそこで何を見ているのか、毎日をどのように過ごしているのか、何に困っていて何を求めているのか、
具体的にイメージしてみましょう。きっと“理想のお客さま(ターゲット)”が集まるありきたりではない場所が見つかりますよ。
(牧野めぐみ)