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【建築家のための戦略&マーケティング vol.4】

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4. “理想のお客さま(ターゲット)”はどこにいる? その1

「“理想のお客さま(ターゲット)”は、これでいく!」と決めたら、その人たちにまずは知ってもらうための打ち手が必要です。知ってもらわないことには始まりませんから。

効果的に自分を知ってもらうには?
今行っているDMや広告やイベントなどに“理想のお客さま(ターゲット)”はどのくらいいるのだろうか?
それよりも、もっとたくさん集まっている場所はどこだろう?

“理想のお客さま(ターゲット)”を絞り込んで具体的にすると、これまで認知度を上げるためにやってきた打ち手が、一般的でありきたりだということに気づくと思います。もちろん絞り込んでいなかったからありきたりだったわけです。
絞り込むと、“理想のお客さま(ターゲット)”が集まる、ありきたりではない場所が見つかります。ありきたりではない場所とはどこでしょうか?

◆実例紹介
鉄道模型マニアのための温泉旅館「花月園」

伊豆の修善寺に「花月園」という旅館があります。修善寺といえば誰もが知っている有名な温泉地。弘法大師が開いたといわれる「独狐の湯」をはじめ、多くの温泉旅館が軒を連ねているところです。
修善寺の周辺にも数多くの温泉地があり、旅館やホテル、ペンションなど様々な形態の宿泊施設が競っています。宿泊施設はどこもそうですが、空室率を減らすこととリピート率を上げることに最大限の努力をし、顧客獲得に苦労しています。

そんな中でこの「花月園」はリピート率70%越えを誇る、その筋の人たちにはとても有名な温泉旅館。どの筋かというと、タイトルにある通り“鉄道マニア”。いわゆる鉄ちゃんですが、乗り鉄(乗車を楽しむ)や撮り鉄(写真撮影を楽しむ)ではなく、鉄道模型マニア(模型鉄と呼ぶそうです)の人たちに支持されている旅館です。
復活を遂げた旅館としても有名なので、鉄ちゃんでなくても知っている人はけっこういるのではないでしょうか。

元々は「花月園」もいたって普通の温泉旅館で、よくある旅行情報誌に広告を載せて集客していたそうです。お客さまの数が減り業績が低迷する中で、ご主人が自分の趣味である鉄道模型の巨大ジオラマを宴会場に作ったことが、ブレイクするきっかけとなりました。

自分と同じ趣味を持つお客さまに“Nゲージ”や“HOゲージ”と呼ばれる鉄道模型で思い切り楽しんでもらおうと、鉄道模型マニアが読む雑誌に「鉄道模型で遊べる温泉旅館」として広告を出したのです。
広告は想像以上の反響を呼び、全国から鉄道模型マニアが集まってきて、今やその筋では「聖地」と呼ばれる存在になりました。

日本の住宅事情では、鉄道模型マニアが自宅に大きなジオラマを作って思う存分趣味を満喫しているとは考えにくく、「花月園」の約30畳ある宴会場に作られた巨大ジオラマで家族に遠慮することなく楽しめる、というのはマニアにはとても魅力的です。
仲間と一緒に宿泊しても楽しいし、そこで知り合ったマニアとまた新たなつながりもできると、ますますリピートしたくなります。

最初はマニア向けの専門誌に広告を出すという打ち手が必要でしたが、現在ではもうそれさえ必要ないかも知れません。ファンとなった“理想のお客さま(ターゲット)”たちが、ブログやfacebook、twitterで勝手にどんどん宣伝してくれるからです。

そして現在では、“競合”がいくつも現れるようになりました。
ちょっと脱線(鉄道だけに)しますが、後発組の“競合”旅館はターゲットとしてどのあたりを狙えばいいでしょうか。同じ層をターゲットにして「花月園」と同じことをやっても、おそらく勝てません。
ここでも自分の強みとセットで考える必要がありますが、狙うならママ鉄&子鉄のファミリー層、模型鉄なら初心者レベル、といったところでしょうか。何しろ「聖地」ですから、最近始めましたという初心者や子どもと一緒に気楽に楽しみたいというニーズを持つ人には恐れ多いというか、ちょっと敷居が高いんですよね。

「建築も好きだけど鉄道模型も大好き!」という模型鉄建築家のあなたなら、狭小住宅にどうやって取り入れたらいいか、家族の視線を気にしなくて済む工夫やたくさんの鉄道模型を飾りながら収納する方法など、いくつもアイデアが浮かぶでしょ?「模型鉄のための住宅」は狙い目だと思いますよ!

【参考】
◎「だれかに話したくなる小さな会社」 -かんき出版-
◎スターブランドTIMES 2011年04月01日

ところで、【2.“理想のお客さま(ターゲット)”はとことん絞って考えよう!】の中で例に挙げた「愛犬は大切な家族」という人を“理想のお客さま(ターゲット)”にした建築家は、すでに何人も存在します。(まだそんなに多くはないですが)

あなたがもし同じ方向でいこうとすると後発組となりますので、同じ土俵に乗って同じことをしてもまず勝てないでしょう。まずは相手(競合)をよく研究して、“競合”にはなくあなたにある“強み”を見つけ出さなくてはなりません。そしてその“強み”を一番理解してくれる“理想のお客さま”はどんな人か?をセットで考えて打ち手を決める必要があります。
後発組はそれだけ大変です。だからこそ、早く始めた方がいいと思いませんか?(その2に続きます)

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