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建築家のための戦略&マーケティング:02 建築設計事務所が仕事を取るには?【その2・理想のお客様を見つけるべし!】

設計事務所が仕事を取るにはどうしたら?
その1では「自分の強みを認識してアピールすること」、そして「その強みは理想のお客様(クライアント)に向けて発信することが大事!」ということをお伝えしました。
今回は、その「理想のお客様(クライアント)」ってどんな人?というお話です。

「そうそう!こういうのがほしかったんです!」と言ってくれる、自分にとって理想のお客様(クライアント)。マーケティングや戦略理論ではよく「ターゲット」という呼び方をしますが、私はこの表現があまり好きではないので、ここでは理想のお客様(クライアント)という表現で進めていきます。

この記事のポイント

  • 全ての人を対象にすると、自分事にならないので選んでもらえない
  • お客様は建物(モノ)ではなく、その建物がお客様のニーズを満たすこと(価値)を買っている
  • お客様の「ニーズ」で絞るために、理想のお客様(クライアント)を具体的にする
  • 理想のお客様(クライアント)は、 自分の「好き×得意」で貢献できる相手

理想のお客様(クライアント)を具体的にする

理想のお客様(クライアント)は、とにかく絞ること!
これは現代の日本においては業界問わず、常識中の常識です。レストランもホテルも旅行会社もエステサロンも、歯医者さんや公認会計士も、「理想のお客様(クライアント)はこんな人で・・・」と徹底的に絞った上で、自分の戦略を考えています。市場縮小と言われる中、伸びている企業はどこも当然のようにやっています。

建築家も同様です。
「理想のお客様(クライアント)はこんな人で、こういうニーズを持っている。だから自分のこんな強みを喜んでくれるから、それをこういうメッセージで伝えよう。」と、しっかり戦略を立てた上で行動することが大切です。

理想のお客様(クライアント)を絞る方がいいとは、どういうことなのか?
これは自分がお客様になる場合を考えてみるとわかりやすいと思います。

●例えば、雑誌を買う場合。
あなたが30代男性でファッションに興味があれば、20代~60代の男性向け総合雑誌よりも、30代男性向けファッション雑誌を手にとりますよね。

●例えば、両親の結婚記念日にプレゼントを選ぶ場合。
ほしいものを聞いても「特にない」「自由になる時間」なんて返事しか帰ってこないし、親の世代がほしいものって正直わからない。とりあえずデパートで探しますか?それとも、シニア層向け商品&サービス専門のショップが「親孝行したいあなたを応援します!フェア」をやっていて、両親と同じくらいの年齢の人が笑顔で接客していたら、そちらに行ってみたくなりませんか?いろいろと相談に乗ってもらえそうだし、思いもしなかったプレゼントが見つかりそうです。

「うんうん、確かにそうだ」と納得できたら、では建築家の仕事に置き換えてみてください。
「自然素材も和風もRCも木の家も、バリアフリーもマンションリノベーションも店舗もクリニックも、何でもやります!建築の設計なら自分、何でもできますよ!」では選んでもらえない、ということがおわかりいただけると思います。

だからといって「RC専門です。打ち放し、自信あります!」とか、「自然素材ならお任せ!」とか、材料や工法などの「モノ」で絞ってアピールしてもそれほど意味はありません。その程度の絞り方なら、設計施工の会社がとっくにやっていて、すでにそれだけでは選んでもらえない時代になっているからです。

自然素材でいくなら、自然素材を求めるお客様ってどんな人なのか?なぜ自然素材を求めるのか?なぜ人工的な材料ではダメなのか?その人はいったい何に困っていて、本当に心の底からほしいものは何なのか?・・・できるだけ具体的に考えていただきたいのです。

ドリルを売るには、穴を売れ

大事なのはお客様の「ニーズ」で絞ること。お客様は「モノ」ではなく「価値」を買っているからです。
マーケティングの格言に「ドリルを買いに来た人がほしいのは、ドリルではなく穴である」という言葉があります。お客さまはドリルそのもの(モノ)がほしいのではなく、ドリルが開ける穴(価値)がほしいのです。

建築家の場合なら、あなたが設計した建物(モノ)ではなく、あなたが設計した建物がお客様のニーズを満たすこと(価値)にお金を払ってくださるのです。
「○○が不便で困っているから、家を建てたら快適に○○したいんです。」
「○○が大好き!○○を楽しめる家なら残業なんかしないで毎日速攻で帰るのになあ。」など、
お客さまのニーズにあたる○○をできるだけ具体的に考える。そして○○を手に入れたお客さまが毎日どんな風にそこで過ごすのか、映画の撮影監督になったつもりでイメージしてみてください。

映画の撮影監督になったつもりでイメージ

理想のお客様(クライアント)は、 自分の「好き×得意」で貢献できる相手

そしてもうひとつ大事なのは、理想のお客様(クライアント)は、 自分の「強み」とセットで考えること。多くの場合自分の「強み」は、得意なことや経験豊富なこと、そして何より、自分の好きなこと、やりたいことと一致します。

例えば、あなたの好きなことが「車」だったら。
休日は朝からずっと洗車や車いじり。ご飯も忘れて没頭できるくらい車が好きなら、同じような車好きの人を理想のお客様(クライアント)にしてみる。「愛車と暮らす家」「愛車を愛でる住まい」というキーワードで考えてみてはいかがでしょうか。

あなたが「オーディオ」命、だったら。
同じようなオーディオ命の人を理想のお客様(クライアント)にしてみる。オーディオ命の人がどんな家をほしいと思っているのか、何がどうなったら嬉しいのか、あなたなら簡単にわかりますよね。

あなたが子どもの頃から犬を飼っていて「もう犬のいない生活なんて考えられない!」としたら。
あなたと同じ「もう犬のいない生活なんて考えられない!」人を理想のお客様(クライアント)にしてみる。「愛犬は大切な家族」という価値観が一致しているので共感が生まれやすく、共感した上でさらに完成した家に満足できたら、お客様はあなたのファンになります。(もちろん、猫でも同じ)

あなたのホームページに訪れたときから「そうそう!こんな○○のある暮らしが夢だった!こういう家がほしかったんです!」と言ってくれる理想のお客様(クライアント)とはどんな人なのか、自分の「強み」と照らし合わせて徹底的に考えてみてください。

お客様に選んでもらいファンになってもらうために

戦略とは、強み(自分を選んでもらう理由)を明確にし、理想のお客様(クライアント)を具体的にし、自分が活躍できる世界や将来のビジョンを決めること。そのためにも、ぜひマーケティング(人間の「ほしい!」に応える考え方)を活用していただきたいのです。

でも中には、「他の業界は同じ人が何回もお客様になってくれるけど、建築家の仕事って同じ人がもう一軒!なんてめったにないし、リピーターってものが存在しない。一般論は当てはまらないんじゃ?」と思われる方もいるかもしれません。

世の中には、 (基本的に)1回限りの、リピーターを想定しないビジネスがたくさんあります。
例えば自動車教習所・・・免許が取れたらそれで終わりです。
例えば高校受験の進学塾・・・高校に入学したらもう来ません。
例えばお墓・・・飽きたから変えようなんてまずありませんね。(ご先祖様に叱られそうです)
他にも結婚式場や学習雑誌『小学1年生』など、リピーターを想定しないビジネスはいろいろあります。どうやら建築家だけが特殊、というわけではなさそうですよね。

むしろ1回限りのビジネスだからこそ、そのたった1回のお客様に選んでもらいファンになってもらうための仕組み(マーケティング)が必須なんです。例に挙げたビジネスの中で生き残って伸びている企業はいずれも、戦略を立てファンになってもらうための工夫に取り組んでいます。

他の業界では当たり前の考え方が、建築家の世界ではまだまだ浸透していないのが現状です。きちんと戦略を立てマーケティングを活用し行動に移している、という人がとても少ない。ということは、早くやった者勝ち!だと思いませんか?

 

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