近年、AI(人工知能)の進化により、建築の分野でも設計のプロセスが変化しつつあります。CADや3Dプリンター、BIMなどの登場で大きく効率化が進んだように、今後AIが膨大なデータを分析し効率的な設計をサポートすることで、さらに設計のスピードや精度が向上していくことでしょう。
しかし、建築家の役割がAIに取って代わられることはありません。むしろ、AIと建築家が協力することで、より魅力的な建築を生み出すことができるのです。
AIが得意なこと
AIは大量のデータを解析し、最適な構造や形状を導き出したり適切な材料を提案するのが得意です。例えば、膨大な建築設計の事例をもとに、新しいデザインの可能性を選択肢として提示したり、人間が見落としがちな設計上の問題点を指摘することができるでしょう。
さらに、環境や都市計画のデータを活用し、持続可能で環境負荷の少ない設計や、将来的な課題を予測したデザインを提案することも可能です。
建築家にしかできないこと
一方で建築家が担うのは、単なるデータの組み合わせではなく、「こういう空間を創りたい」「こういう世界を実現したい」という強い想いから生まれる創造です。
「この場所に、どんな空間を創りたいのか?」「ここで、どんな暮らしを提案したいのか?」そういった熱い想いを原動力に、建築家はクライアントの夢を具現化し、地域社会に貢献する空間を創り出すことができます。人の心に響き共感を生み出す建築は、AIには生み出せません。なぜなら、AIには身体と直結した感情や感覚がないため、過去のデータから抽出するしかないからです。
人間とAIの領域を分ける鍵
そしてまた、自らの経験や感性を通じて人々の暮らしに寄り添う空間を設計するだけでなく、文化や歴史を背景とした建築を生み出すことができるのも、人間ならではの役割です。地域ごとの伝統や価値観をくみ取り、時代を超えて受け継がれる建築を創造するのは、建築家の持つ「洞察力と感性」によるものです。
感性を活かし人の心に根ざした創造をすること、これこそが人間とAIの領域を分ける鍵だと考えています。
建築家とAIが協力する未来
AIが設計の効率化や最適化を担い、建築家は感性や創造性を発揮する――この役割分担がある限り、AIと建築家の領域が競合することはありません。むしろ、AIを活用することで、建築家はより創造的な活動に集中できるようになり、新しい建築の可能性が広がるでしょう。
AIはCADや3Dプリンターのようなツール(道具)ではなく、人間をサポートする助手のような存在なのです。
デザインファームでは、1992年の創立以来ずっと「建築は人が主役」という理念のもと、建築の面白さを探求しながら学びの場を提供してきました。「自分らしい設計、自分ならではの設計」を追求することは建築家としての創造力を磨くことであり、それはまさにAI時代に求められる設計力であると言えます。
AIと建築家が協働で新しい建築を創っていく…そんな未来をイメージすると、なんだかワクワクしてきませんか?