デザインファームで繰り広げられる「建築っておもしろい!」となるエピソードを紹介する連載。
今回は、またまた牧野校長の考察から、「屋根」についてのお話をご紹介します。
前回の「新しい時代の建築」にも通ずる考察なので、ぜひあわせてご覧下さい!
建築を作り出す要素には「床」「壁」「窓」「屋根」など、様々なパーツがありますよね。
それぞれの要素をどのように配置するか、建築家はそれを考えながら空間を設計していきます。思い描いた通りの空間を作っていくためには、各要素にどんな役割があって、空間にどのような影響を与えるのか、要素の持つ特徴や機能を知っておく必要があります。
例えば「窓」。
窓には、主に、部屋に光を取り入れる役割や風の入れ替えをする役割がありますが、つける位置や大きさが違うだけで空間の印象がガラリと変わります。
壁の高い位置に小さく配置された窓と、床に近い位置に横長に配置された窓。気分を落ち着かせたい時、あなたならどちらの窓がある部屋に居たいと思いますか?
2つの部屋をイメージした方はお分かりかと思います。
同じ条件の部屋であっても、窓が違うだけでその空間の使われ方は違うものになるんです。さらに、その窓は開けられるか閉じたままなのか?外に見えるものは?カーテンはつける?障子にする?・・・・
たかが窓、されど窓。設計って奥が深いですね。
屋根の意味は、建築の成り立ち方によって違う
さて、窓も追求していくととってもおもしろいのですが、今最もアツいのが「屋根」!
今後、屋根無しでは建築は語れなくなる!(のではないか)ということで、デザインファーム内でも時折話題に上がっています。
屋根の歴史をたどってみると、壁で建築を進化させてきた西洋と、フレームで建築を作ってきた東アジアや日本では、「屋根」の捉え方が違うのです。正確には、中国も石を組積して建築を作ってきた壁建築の文化なので、ヨーロッパ・中国の大陸と、東アジア・日本の比較です。
石を使った建築は、壁で囲ってから屋根で覆う、という順で建築を作っていきます。
窓も後から開けるので、壁建築の文化では、窓は風を通す「穴」として捉えられているそう。英語の「window」の中にも、「wind(風)」という言葉が入っています。
壁で仕切る建築文化の中では、屋根は単なる雨よけに過ぎません。
一方、東アジアや日本の木造建築では、壁はあって無いようなもの。
雨が多く蒸し暑い地域では、壁よりも屋根が必要とされたこと、そして構造上、屋根の形を自由に変化させられたことから、壁よりも屋根の形状がさまざな形に変化していきました。こちらは壁建築に対して「屋根」の建築とも言えますね。
屋根建築の文化では、空間と空間の仕切りがとても曖昧です。
このように、建築の成り立ち方によって屋根の概念は違うんですね。
ここ数年、建築誌を見ると、屋根に着目した建築が増えてきています。
第一線で活躍する建築家たちは、屋根の重要さ、屋根の変化を感じ取っているのがわかりますね。昨年デザインファームの合宿で訪れた荘銀タクトも、屋根の形状が特徴的な建築でした。
これから建築家たちが屋根をどのように変化させていくのか、そして、これから建築家を目指す学生たちがどんな変化をもたらしてくれるのか、注目していきたいと思います!
さらにその先、形状とともに、「曖昧に仕切る」という屋根建築が作り出した概念も重要なポイントになってゆくのかも・・・。
(文・田中いづみ)