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建築家のバックアップと、工務店への設計支援

「デザインファームプロダクション」を、今年いよいよ立ち上げます。

デザインファーム建築設計スタジオは、建築家の養成所として、そしてプロの世界のファーム(2軍)として、

18年間実績を作ってきました。この間様々な建築家の事務所へ、数多くの卒業生を送り出してきました。

また建築家たちからも卒業生が欲しいと要求されるように、卒業生の実力が認識されるようになって

きました。独立して自分の事務所を構えた者も少なくありません。

しかし、師匠である建築家の下で修行を重ね、十分な実力を備えながらも独立の夢を果たせぬ者もいます。彼らの夢の実現に足りないものは、営業力と経営のノウハウと、実績を伴う信用です。それらをカバーし世に送り出すシステムが、「デザインファームプロダクション」です。

モノ作りの世界で、マネージメントをするシステムが存在しないのは、建築家ぐらいではないでしょうか。タレントにおいては芸能プロダクションや所属劇団がその機能を果たし、画家や彫刻家のようなピュアアートにさえ画廊がバックにつきます。小説家には編集者というように、およそモノを生み出す者が自らプロデュースとマネージメントを行うなんてのはかなり遅れていると思うのです。
建築家プロデュースならもう存在するんじゃないの?・・・その通りです。ちょっと検索するだけでたくさん出てきます。「単に建築家を紹介するもの」「施工を目的とするもの」「建築家にコンペをさせるもの」と、様々なプロダクションが存在しています。
しかしいずれも既存の実績ある建築家の設計ノウハウを利用するものであり、建築家を育てる視点がそこにはありません。プロダクションは、まだ若い実績のない建築家の後ろ盾として育成する機能を持たなければいけません。デザインファームがプロダクションを立ち上げなければならない理由がそこにあります。

デザインファームの究極の目的は、建築意匠全般のレベルアップです。そのために、まず初心者教育のシステム作りから始めました。建築のプロのためのクラスも実績を積んできました。いずれも人を育てることが一番大切と考えるからです。

しかし現実には、建築家の設計よりはるかに多くのいわゆる「設計施工」による建築が生み出されています。多くの場合、ここには意匠設計の専門家は存在しません。そして、わずかな建築家たちによる建築だけでは、日本の街並みは変わりません。ここにも手をつけなければという思いが、当初からありました。
一方で、デザインファームの学生コンペで実際に住宅を何軒か建てた工務店や、プロ向けのクラスを受講して設計のうまい工務店になっていく、などの事例をみると、価格競争ではなく意匠設計力、デザイン力で差別化をはかり生き残ろうとする工務店も増えてきていると感じます。その背景には、デザインにお金を払う価値が一般に認められるようになったことも、一因としてあげられます。
そこで「設計施工」を行う工務店への設計支援構想が生まれてきました。「設計」の持つ価値を共有できる「施工」のプロに、デザインファームが基本設計を提供し、「設計」「施工」ともに優れた建物を増やしていこうという試みです。建売住宅のように施主がまだいない場合は、ターゲット設定や設計コンセプト等プロモーション戦略まで提供します。注文住宅の場合には、施主へのプレゼンテーションもサポートします。こちらはすでに第1号がスタートしました。お正月明けには上棟しますので、近日中にブログで報告したいと思います。

今、例えばデザイナーズマンションが当たり前になったように、建築デザインのニーズの様々なピースがかみ合ってきたと感じています。「デザインファームプロダクション」構想は10年ほど前からあったのですが、いよいよ機は熟し、そして不況の今こそ立ち上げの時期と判断しました。卒業生を中心に若い建築家をバックアップするシステムと、工務店への設計支援の2本柱で、日本の街並みを素敵にしていく手助けをしたいと考えています。
(牧野 徹)