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2010年 イタリア合宿回想録 第2回

10月19日(火)
本日は朝一番からアカデミア美術館で“ダヴィデ”だ。もちろんミケランジェロの代表作のあの“ダヴィデ”。

フィレンツェを代表する人気者なので予約なしでは大変な列になる。もちろん日本で予約してあるので大丈夫。

早速入ってみよう。

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↑ ジャン・ボローニャの“サビーネ女たちの略奪”の石膏模型と大理石の本物。

最初の部屋で目に入るのはジャン・ボローニャの“サビーネ女たちの略奪”の石膏模型。マニエリスムの傑作である。(写真左)
マニエリスムとは、ルネサンス時代とバロック時代の間、1500年代後半の、極度の技巧性・作為性を特色とする様式のこと。この彫刻の大理石の本物はシニョーリア広場のロッジアにある。(写真右)
そのほかにはミケランジェロの未完の“パレストリーナのピエタ”やユリウスⅡ世の墓所の奴隷像などがある。

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↑ “ダヴィデ”

さて“ダヴィデ”だが、説明の必要のないほど有名な、ルネサンスを代表する作品である。現地では本物を目の前にして学生たちと語り合うのだが、旧約聖書の物語の時間の切り取り、表情の認識、割礼の痕跡がない等、結論を言えば、これは彫刻としての絶対価値を求め実現した作品と言えるのではないかと。一方で共和制を守る正義と自由の象徴、ピサを奪回する戦うフィレンツェ、反メディチ・・・・とシンボルとしての役目も背負わされた。と、このあたりまで解釈して次の時代バロックの理解につなげよう。

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ミケランジェロの “フィレンツェのピエタ”      ↑ ドナテッローの“マグダラのマリア”

次はドゥオーモ美術館で、ミケランジェロのこれも未完の“フィレンツェのピエタ”やドナテッローの“マグダラのマリア”などを見せていただく。ブルネッレスキのデスマスクもある。美術館はかなり現代的に改装されているが、なんと言っても人が少ない。人気ないのね。

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ミケランジェロの“バッカス”

バルジェロ美術館である。ここは見物が多いので代表的なものを報告することにしよう。まずはミケランジェロの“バッカス”。お酒の神様だが、お酒を賛美する様子がまるでない。その酔っている筈の表情が少し怪しい。まるでミケランジェロの内面の狂気の現れのようにも見えて大変興味深い作品だし、表現者としてその狂気に共感した学生も多かったのでは?
ドナテッロの“ダヴィデ”も見逃せないし、ギベルティとブルネッレスキの“イサクの犠牲”コンクール案もルネサンスの幕開けとして重要だろう。しかしマニアックだが、ここにはなぜかベルニーニの“コスタンツァ・ボナレッリ”の胸像があるのだ。教皇をして「ベルニーニはローマのために。ローマはベルニーニのために」 と言わしめたベルニーニの作品が訳あってフィレンツェにあるのだ。しかし見つからない。係員に聞きながら探し回っていると、、鍵がかかっている部屋にあるので、そんなに見たいなら鍵を開けてやるとのこと。これはうれしい。
ベルニーニはこれから行くローマでの主役。ベルニーニ彫刻を沢山見てから“コスタンツァ”というのがいいのだろうけれどこれは仕方がない。長い話で割愛するが、これはベルニーニの愛人の像で、生涯にわずか2体の依頼されたのではないベルニーニ自身のための作品の一つ。あまり貞節ではない愛人のややだらしないリアルなポートレートは、学生たちにとってベルニーニをまだ見ないうちではピンとこなかったようだ。ローマでベルニーニを見てから思い出してね。

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現在はアカデミア美術館とバルジェロ美術館は撮影禁止です。写真は、撮影が可能だった数年前の撮影です。またコスタンツァは著作権フリーの素材です。
(マキノ)