ゴールデンウィークも終わり、デザインファームはカレンダー通りに授業再開しました。
実家に帰ったり、建築を観に旅に出たり、お休みを満喫することはできましたか?
連休初日の4/29に我が校の講師をされている伊藤一郎先生のオープンハウスがありました。
関係者のみで行いたい、というご意向で、学生の皆さんには告知することができませんでしたが、
この場を借りてご報告したいと思います。
まずは、「オープンハウス」 を初めて聞く方のために説明から。
建築家が竣工直後の建物を、施主に引き渡す前に、主に同業者に公開すること。
美術館や公共の建て物と違い、住宅は建て主さんが住み始めたら、設計の参考にと内部を見せていただく
ことはできません。
唯一、設計者と施主以外の人間が足を踏み入れることのできる機会-それがオープンハウスなのですね。
もちろん、建て主さんのご好意があって初めて実現するものです。
西荻窪の緑豊かな住宅街に建つ、白いお家。伊藤先生のお人柄が感じられるでしょうか?
こちらの写真には写っていませんが、新宿から15分という都心でありながら眼に緑がよく映りこんでくる、
そんな街です。今回印象的だったのは、1階からメインダイニングのある2階へ上がったときの開放感と、
お隣の松の樹がまるで窓の額縁に収まるようにインテリアの一部として存在していることでした。
この松、とても枝振りの良い立派なものなのですが、着工したときに枝が邪魔にならないようにと配慮されて、
かなり切ってしまわれたそうです。でも、そのうちにご近所同士お付き合いが始まれば、お隣の木々を楽しめる
ような、そんな素敵な関係をもたらしてくれるものになるかもしれませんね。
この一本の松の樹を眺めていると、このお家でのストーリーがむくむくと浮かんできました。
家具がなく、生活の匂いがまったくしない状態で、そんな風に想像ができたのはすごいことだと思いませんか?
後で聞いたところによると、窓枠にぴったり収まる松は設計者の狙いだったそうです。さすがです。
建物だけでなく、その周辺の環境さえも建築の要素として取り入れる。
建築家は、建て主さんの日々の生活の演出家であり、その舞台を整える舞台監督でもあるんですね。
建築家の仕事を目の当たりにして、五感で納得し圧倒された日でした。
建て主さん、伊藤先生、お忙しい中どうもありがとうございました。
(米原 まり子)