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【建築家のための戦略&マーケティング vol.6】

6.伝わらなければ意味がない! 効果的なメッセージとは? その1

「そうそう、これ!こういう家がほしかったんです!」と“理想のお客さま(ターゲット)”に反応してもらうには、興味を持ってもらえるようなメッセージを出す必要があります。
ホームページで、DMで、ポトフォリオで、イベント会場で、あなたの強みを表現したビジュアルと一緒にお客さまに伝えたいメッセージ。いったいどんな言葉を使えばいいでしょうか。

心を動かす効果的なメッセージ、それにはコツがあります。
それはあなた(売り手側)ではなく、お客さま側の言葉で表現すること。主語を、自分ではなく“理想のお客さま(ターゲット)”にすることです。

そういえば名キャッチコピーといわれる数々は、お客さまの言葉でできています。
「あいてて良かった!」・・・セブンイレブン
「そうだ京都、行こう。」・・・JR東海
「ん~っ、まずい!もう一杯!」・・・キューサイの青汁

例えば野菜不足を解消しようと野菜ジュースを買う場合。
「当社の商品は、ケールが何グラムでゴーヤが何グラム。吸収率が何%アップしました。」と言われるのと、「一日に必要な野菜がこれ一本!」と言われるのと、どちらを買いたいですか?
または、「野菜ジュースは、あなたの健康をサポートします。」と言われるのと、「野菜嫌いでもゴクゴク飲める。」ではどうでしょうか?

“主語をお客さまにする”というのは、単にテクニックの話ではありません。
お客さまにとって嬉しいことをお客さまの言葉で表現する、つまりお客さまが求める価値(お客さまのニーズ)をそのままメッセージにする、ということです。
お客さまにとって嬉しいことをメッセージにするっていったいどういうことなのか?実例でご紹介しましょう。

◆実例紹介
◎24hコスメ
メッセージ:「24時間落とさなくてもOK!」
  http://www.24h-cosme.jp/ (別ウィンドウが開きます)

「タッキー&翼」がCMに出ているので、ご存じの方も多いと思います。24時間、一日中つけっぱなしでも大丈夫、それでも肌に優しい化粧品ということで、商品名もそのままズバリ「24hコスメ」です。
シリーズの中でも特に売れているのがファンデーション。(私も使ってます!どーでもいいですね)

実はこのファンデーション、最初からこの名前ではありませんでした。
開発者の藤田真規さんが幼少期に重度のアトピーで苦しんだ経験から、天然の成分にこだわり試行錯誤の末ようやくできあがったもので、発売当初は違う名前で「自然派化粧品」を全面にアピールしていました。

石油由来はもちろん植物由来の合成成分さえ一切使わない「100%天然成分の化粧品」なので、敏感肌など一部の人には好評でしたがそれほど売れ行きは伸びず・・・。
巷には「天然成分」と謳っていてもごく一部しか使われていなかったり、天然成分を抽出するときの溶剤に合成の防腐剤が入っていたりと、名ばかりの自然派化粧品が数多く存在し、どうしたらその違いをわかってもらえるだろうかと悩んでいたそうです。

そんなある日、藤田さんが店頭に立っていたときのことです。若い女性がパウダーファンデーションを2つも買おうとしているのを見て「お若いのに、自然派に興味があるんですね。」と声をかけたところ、びっくりする答えが返ってきました。

それは「自然派なんて、どうでもいい。」というもの。彼女が選ぶ理由は、「お泊まりデートやカラオケで友達と朝まで遊んでも、肌がボロボロにならないから。」というものだったのです。

その声をヒントに生まれ変わったのが現在の「24hコスメ」です。
お客さまにとって嬉しいキーワードがそのまま商品名となり、「24時間落とさなくてもOK!」というメッセージがその品質の高さを物語っています。
敏感肌の人や天然成分にこだわる人だけでなく、夜遅くまで遊ぶのが好きな人、長時間で不規則勤務の人、メイクを落とさずに寝てしまうめんどうくさがりの人など、年齢問わず幅広い層に受け入れられ大ヒットとなりました。

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このエピソード、どう思われますか?
これって、簡単なようで実はとても難しい。実際にまわりを見てみると、多くのメッセージがお客さまではなく売り手側の言葉になっていることに気づくと思います。

「(我が社の製品は)クオリティが違います。」とか、
「(私たちは)本物をお届けします。」とか、
「(当社は)高品質で高解像度を実現しました!」や、
「(この製品は)遮光性、耐摩耗性に優れています。」など、
これ全部、売り手側の言葉ですよね。

では建築家の場合はどうでしょうか。

「(私は)あなたの理想の家作りをお手伝いします。」
「(私たちは)心地よい空間をかたちにします。」
「(僕等は)シンプルな建築をめざします。」
「(当事務所は)あなたの感性にあった住まいを作ります。」
「(主語、以下同文)設計とはクライアントとの信頼関係に基づく共同作業であると考えています。」
などなど、建築家のホームページを見ていくと、この「当事務所は」「私は」「私たちは」のオンパレード。

これらのメッセージが間違っているというつもりはありません。ただ、最初に伝えるべきメッセージではないということです。設計理念にあたる、あなたの大切なメッセージは、興味を持ったお客さまがあなたのことをもっと知りたくなってから、もっと後でいいのです。

【2.“理想のお客さま(ターゲット)”はとことん絞って考えよう!】で、「ドリルを買いに来た人が本当にほしいのは“ドリル”ではなく“穴”である」という言葉を紹介しました。

「私は」 「当社は」 で始まるメッセージは、“穴”を開けたいお客さまに、我が社の“ドリル”は高出力高容量で、最大トルクがいくつ、回転数が毎分何回、持ち手のカーブが・・・と、一方的に売り手側のこだわりを発信しているのに過ぎません。

プロなら「なるほど、これはいい!」とわかってくれると思いますが、お客さまはプロでしょうか?ファンデーションなら 「自然派自然派! 本当に無添加なんです~!」 と言ってるのと同じことです。

それよりは 「24時間、落とさなくても大丈夫!」 と、“だからどう嬉しいのか”を率直に言われる方が、スッと耳に入って 「そうなの?どうして?」 と興味を持つことができます。

そして
「これ(この建築家)、良さそう!」と興味を持ったお客さまが
「本当に?どんな成分(どんなプロフィール)なの?」ともっと知りたくなったら、
その根拠としてこだわりの部分(理念)を伝えればいい
のです。

あなたのホームページやポトフォリオには、どんなメッセージが書かれていますか?
あなたが設計した家に住んだら、お客さまはどう嬉しいのでしょうか。どんな言葉でその嬉しさを表現してくれますか。

もしかしたら 「家を建てるのに建築家にお願いしたい。」 と、“理想のお客さま(ターゲット)”が建築家を探しに来てくれたのに、結局選べないままハウスメーカーやパワービルダーに流れてしまっているのかも知れませんよ、建築家のみなさん。

【参考】
◎売れたマーケティング バカ売れトレーニング:売れたま 2014/03/17号
http://archive.mag2.com/0000111700/20140317235000000.html  (別ウィンドウが開きます)

↑ 上記参考ページでは、製品はそのままに“主語をお客さまにする”ことで売り上げを4倍に伸ばした事例が載っています。
お客さまにとって“だからどう嬉しいのか”を考えるヒントになります。

(牧野めぐみ)