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「街中の集合住宅」 発表講評会

3学期がスタートいたしました。

デザインファームの学期始めはいつも設計課題の発表講評会で幕開けをいたします。

今回の幕開けとなる発表講評会は建築設計スタジオ上級科の設計課題「街中の集合住宅」でした。二年目となる

上級科のみなさんにとって、1年生以来の久しぶりの住まい系のプロジェクトです。教室からほど近い中野の

住宅地の一角を敷地として、そこに12世帯の家族が住まう集住体を計画するという設定でした。

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このプロジェクトは上級科の生徒さんたちにとっては、今までに増して歯応えのあるガチンコ勝負のものだった

ように思います。狭い敷地に12世帯48人もの人たちが肩を寄せ合って毎日を暮らす。どのような空間作りを

すればみんなが仲良く、そして楽しく住まうことができるだろうか。そこでは戸建て住宅とはかなり違った多くの

ファクターを考慮しなければなりません。そして同時に、戸建てではなかなかできない新しい都市生活の在り方の

提案もできるという、難しさと楽しさを併せ持ったプロジェクトです。

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どのプロジェクトを手がける時も生徒さんたちはみんな、敷地や建物の中に実際に立ってアイレベルで眺めた様子

をとても重要視して設計を進めます。みずからが設計を進めている建築の中にバーチャルに 「住まう」 のです。

単なる部屋並べや間取りだけで設計を終わらせてしまうということはありません。

そんな意味でもこのプロジェクトは常に、住み手である自分やお隣さんである自分、お父さんお母さんや子供で

ある自分、さらには近所に住む人や通りがかりの人である自分など、実に様々な人たちの立場に我が身を置いて、

自分のエスキースを客観的・批評的に洗練させて行かねばなりません。

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しかし数週間かけてがんばった甲斐があって、どの作品もとても魅力に満ちあふれたレベルの高いものばかりに

.なりました。プライバシーの確保はほどほどに抑えて、開放的でいつも周りの家族たちと気配を共有できる

住まい。子供さんたちが安心して走り回り、年配の方がひなたぼっこをゆっくり楽しめる広場。家路につく

お父さんにとって心休まる家の灯り。そんな様々な生活場面を一つ一つていねいに考慮した成果としての、

すばらしい集住体がこの日はたくさん誕生しました。

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僕にとって発表講評会の楽しみの一つは、みんなの作ったすばらしい建築空間が新たに誕生してお披露目される

場に立ち会えることです。生徒さんたちにとってはこの日はプロジェクトの完成を証明する節目の日かも知れ

ない。けれども僕にとっては 「完成」 というよりも、これから多くの人に見られ批評されてどんどん洗練されて

行く、新たな作品の誕生の日を意味するように思えてなりません。生徒さんの作品は単なる課題の提出物

なのではなく、未来の住環境や都市環境に向けて発信される貴重なメッセージなのです。

(水沼 均)