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2010年 イタリア合宿回想録 第3回

10月19日(火)-2
さてサン・ロレンツォ教会。ブルネッレスキの設計である。

ファサードは完成しなかったけれど、かえってそれが外観上の大きな特徴になった。

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サン・ロレンツォ教会

ドゥオーモのクーポラの設計が1418年で、このサン・ロレンツォ教会が1420年。ルネサンス建築のほんとに

はじめの頃の作品である。では中に入ってみよう。

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ルネサンスとはプラトンをきっかけとする古典への回帰だが、建築様式はプラトンのギリシャではなくローマだ。コンクールでのギベルティとの優勝争いの後、ケツをまくったブルネッレスキはドナテッロをつれローマに行って古典建築を勉強したのだから当たり前だね。
何がギリシャと違うのかといえば要素として一目でわかるのがアーチの存在。ギリシャでは柱の上に石の梁を載せるのに対し、ローマは梁ではなくアーチを組む。それらパーツは古典からの引用だが、作り上げた建築は神殿ではなく教会や屋敷である。これがルネサンス建築。しかしそんなことより一点透視図法によって、立体として完成する姿を確認して設計する最初期のものと思えば、ここから建築家の仕事が始まったのかと感慨深いものがあるね。
サン・ロレンツォ教会の中庭もルネサンス的アーチとトスカーナ土着の様式の初期ならではの混合とか、ブルネッレスキの旧聖具室と約100年たってからのミケランジェロの新聖具室の比較とか、見所や思案どころがたくさんあるのだけれど、なんと言ってもミケランジェロのラウレンツィアーナ図書館の階段が見るべき筆頭だろうと思う。

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↑ ミケランジェロのラウレンツィアーナ図書館の階段

何度もフィレンツェを訪れていると、ここを公開していたりいなかったり、写真を許可していたりだめだったりと来るたびに違うのだけれど、今年は大盤振る舞いで初めて階段の上からと、図書館内部の撮影が許された。2年前の合宿では近づくことさえできず、今年も直前までの調べでは、蔵書研究の目的のみ入室を許可ということだったのでびっくりである。中に入れることさえ期待していなかったので一眼レフはホテルにおいてきた。というわけで写真は学生のNさんから借りました。
このラウレンツィアーナ図書館の階段は、造形的にバロックという言われ方もするのだけれど、それよりも舞台装置のようにこの階段での出来事を支えていることがバロックなのだ。
たとえば柱が2層目にしつらえてあることで空間認識に錯覚を生じさせてるあたりが見事である。これがバロックの天才ベルニーニの建築に繋がって行くのだね。その話はまたローマで。
これから、サン・ロレンツォ教会の君主の礼拝堂からミケランジェロの新聖具室を見て、予約してあったウッフィツィ美術館を回って、晩御飯。ホテルの近所の昔からよく行くトラットリア『マンマジーナ』へ数名の学生たちと。いつも以上に大変結構でした。

つづく