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学生作品紹介 「やまださん家の穏やかな日常 -大きな集合住宅-」

5/31〜6/3まで、明治大学アカデミーコモンにて学生設計優秀作品展 (通称 レモン展) が開催されました。

全国の大学、専門学校の卒業設計が並ぶ中、デザインファームからは昼間部住宅コース卒業の永野美華さんが

出展。展示を終えた永野さんに、卒業設計ついて伺いました。

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デザインファーム (以下、DF) :
永野さん、レモン展おつかれさまでした。早速ですが、作品について伺わせてください。
タイトルが 「やまだ家の穏やかな日常」 ということですが、具体的にはどのような設計なのですか?
 
永野 (以下、永) :
昼間部住宅コースの卒業設計は、200世帯200年住み継ぐ集合住宅という大テーマを与えられます。その中で、自分のテーマを見つけて設計していくのですが、私の場合は 家族との距離 をテーマにして設計を進めていきました。
 
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DF :
家族との距離・・・なるほど。では、それはあとでゆっくり伺うとして、まずはこの計画のおおまかな配置などを教えてください。
 
永 :
まず(1)4人家族用の平屋(2)2人暮らし用の二階建て(3)一人暮らし用、この3つのタイプ別の住戸を、1つの中庭を囲んで8軒配置し、それをさらに生活の景色が繋がってみえるように連続させることで16軒で1つのグループができるように構成しました。このグループを、ゆるやかな傾斜のある敷地にいくつも配置した280世帯の集合住宅です。
 
DF :
中庭をいくつかの世帯で共有しているのですね。
 
永 :
はい。さっきテーマは 「家族との距離」 と言ったのですが、それだけではなくて 「ご近所さんとの距離」 もこの設計のひとつのテーマになっています。希薄になってしまっている人と人の繋がりをこの建築で再構築できないかと考えました。

この庭は8世帯が共有していますが、きっちりと区分けはしていません。だからといって、みんなで何かをする場所というわけでもなくて、個々の領域は住む人たちが自分たちで作っていけばいいと思います。ご近所さんの日常が見えることで話しかけるきっかけになったり、住民同士のコミュニケーションも生まれますし。中庭を囲む8軒は4人家族の世帯や1人暮らしのおじいちゃんおばあちゃん、2人暮らしのカップルなど違った暮らし方をしている人たちで構成されているので、住戸によって庭との接し方を変えて、それぞれが違う用途や過ごし方ができるように計画しました。
 
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「近すぎず、遠すぎない家族の距離」
 
DF :
それでは最初の話に戻りましょう。「家族との距離」 がテーマということですが?
 
永 :
私自身がこどもの頃過ごした家は、家族との距離が近すぎて、とても居心地が悪かったんです。
いま、家族間の関係が原因で自立できない、自分に自信が持てない子が増えています。そんな社会問題と自分の経験を重ねて、近すぎず遠すぎない、家族との距離を保てる集合住宅を提案したかったんです。
 
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DF :
「家族との距離を保つ」 というのは、設計にはどのように反映されたのですか?
 
永 :
たとえば、玄関土間の高さを他の空間より下げて、段差で空間をしきるという操作をしました。この玄関土間は
家族と距離を保ちたい時に逃げ込める場所として機能します。
 
壁で完全に見えなくするのではなくて、見えているけど自分のスペースとしてプライベートが確保できる、という
場所です。この土間には、外の世界と庭をつなぐ役目もあります。
 
そして、各住戸はあえて広くはしませんでした。部屋を広くすれば距離をとることはできるけれど、離れすぎては
いけないので。それで4人家族用の住戸は平屋にしています。
 
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DF :
卒業設計ということで、いままでやってきたことの集大成になりますが、2年間デザインファームで設計を学んでみてどうでしたか?
 
永 :
…つらかったです(笑)設計するときって自分のことを全部出さなくちゃいけなくなるので。でも、2年間いろんな課題をやってきて自分のことが見えてきて、入学当時大嫌いだった自分のことが今では大好きになりました。なのでよかったなと思います。
 
永野さん、インタビューにお応えくださりありがとうございました。
2年間おつかれさまでした。今度はプロとして建築の世界で活躍してくれる姿を楽しみにしています!