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建築家のための戦略&マーケティング vol.13

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13. 建て主候補が建て主になるまで-知って契約して住んでファンになるには?

あなたにとっての理想のお客さま(建て主候補)は、どのようなプロセスを通って建て主となるのでしょうか。そのプロセスでの建て主候補の心理状態はいったいどのようなものなのか、ちょっと探ってみましょう。

一般的に何かを購入するまでの消費者の心理を表すものとして、有名なものに「AIDMA(アイドマ)の法則」があります。

◆AIDMA(アイドマ)

Attention(注意)

Interest(関心)

Desire(欲求)

Memory(記憶)

Action(行動)

 

まずあるものに気づいて(注意)、興味関心を持って(関心)、それを欲しいと思って(欲求)、いったん記憶にとどめて(記憶)、その結果買う(行動)といった心理状態の流れを表現したものです。それぞれの頭文字をとって、AIDMA(アイドマ)です。なるほどなあ、と思いますよね。

これを(特に購入する手前の段階を)もう少していねいに、そして買って終わりではなく、使って満足しファンになるまでのプロセスを表したものが「マインドフロー」です。

◆マインドフロー

認知

興味

行動

比較

購買(契約)

利用

愛情

という順に7つの段階を進んでいきます。

たとえ100円の商品であってもじっくり吟味する高額商品であっても、このプロセスは同じ。私たちは無意識に頭の中でこの流れで考え、買う買わないを判断しています。ちょっと最近の買い物を思い出してみてください。この流れで進んでいませんでしたか?

そもそも知らなければ興味は持てないし、興味がなければただ知っているだけで行動しませんよね。行動してさらに興味がわいてくると、今度は「同じようなものでもっといいのがあるかも?」と探してみたくなります。そして実際に探してみると、たいていの場合、あるんだな、これが。そうやって見つかった他のもの(競合)と比較して「やっぱりこっちがいい!」と思えたときにはじめて購入、となります。

でも、ここで終わりじゃないんですよね。もしも買ったものが良くなかったとしたら?

「使いにくい」「おいしくない」「すぐ壊れた」「思っていたのと違う」「謳い文句にウソがあった」など、満足できないと誰もリピートしませんね。それどころか「ダメじゃん、これ」とツィートされちゃったり・・・SNSの時代はこれがコワイところ。でも逆に満足できた場合には、「すごくいいよ、これ!」とみんなにシェアしてもらえたりもします。

ネットでの購買行動のプロセスとして大手広告代理店の「電通」が提唱した「AISAS(アイサス)」でも、最後はシェア。人には、自分がいいと思ったものを他人に勧めたい欲求があるようです。

AISAS(アイサス)

Attention(注意)

Interest(関心)

Search(検索)

Action(行動、購入)

Share(共有、商品評価をネット上で共有しあう)

さて、ではマインドフローを使って、建築家の場合を考えてみましょう。

◆建て主候補が建て主になるまでのマインドフロー

1.『認知』  あなた(の設計事務所)の存在を何らかのきっかけで知る。

2.『興味』  あなた(の設計事務所)に興味を持つ。

3.『行動』  あなた(の設計事務所)についてもっと知りたいと思い、行動する。 

(具体的には、問い合わせフォームやメールで問い合わせる、電話する、訪問する、等)

4.『比較』  同じような、いやもっといい建築家(事務所)があるかも?と探して、比較する。

5.『契約』  比較した結果、やっぱりあなた(の設計事務所)の方がいい!と判断し、契約する。

6.『利用』  打ち合わせから着工、そして現場監理を経て竣工して引き渡し。建て主は実際に住む。

7.『愛情』  住んでみて満足する。

ゴール  あなた(の設計事務所)に頼んで良かった!と、クチコミや知人に紹介。

いかがでしょうか?やっぱりこの流れで進んでいきますね。

『認知』から『愛情』までの7段階を、それぞれ『関門』と捉えます。

各『関門』をクリアして進んでいかないと、建て主候補はいつまでたっても候補のままで、建て主となってはくれません。または競合にとられたり、計画そのものをやめちゃったりと、このプロセスから横に流れて出ていってしまいます。

当たり前かもしれませんが(でも重要!)、それぞれの『関門』をクリアするのはあなたではなく、お客さま(建て主候補)です。『関門』を通過できないのには、それ相応の理由があるわけです。

◆建て主候補が止まる理由

1.『認知』  そもそも、存在を知らない。

2.『興味』  存在は知っているが、ニーズを感じず興味がない。

3.『行動』  興味はあるが、具体的な行動に至らない。 (きっかけがない、手段がわからない、等)

4.『比較』  行動して比べた結果、競合の方が良かった。

5.『契約』  契約しようと思ったが、できない理由があった。

6.『利用』  契約したが竣工に至らなかった、または、竣工したが住んでいない。

7.『愛情』  住んだものの、満足できなかった。

要望を無視して自分の設計を押しつけたりしない限り、『利用』~『愛情』関門でお客さまが止まってしまうことはあまりないですよね。おそらくこれを読んでくださっているあなたは、『認知』~『比較』あたりで悩んでいるのでは?

漠然と「どうしたら仕事とれるかなあ?」と考えるよりも、

「まだ見ぬ建て主候補にどうやって認知してもらおうか?」とか、

「興味を持ってくれている人に対して何をすれば、問い合わせしてみよう!と行動を起こしてもらえるかな?」とか、

「競合と比較して迷っている人には、何を伝えれば自分を選んでもらえるだろうか?」など、

それぞれの段階ごとに考えると打ち手を見つけやすいと思います。

あなたにとっての理想のお客さま(建て主候補)は、今どの段階にいるのでしょうか?図面やディテールなど日々の仕事から少し離れて、じっくり考えてみませんか。

 

【参考】

◎実戦 顧客倍増マーケティング戦略  日本能率協会マネジメントセンター

◎図解 実戦マーケティング戦略  日本能率協会マネジメントセンター

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次回予告【建築家のための戦略&マーケティング -プロデュース会社に頼らずに仕事をとるには-】

14. 関門ごとに、階段を上ってもらおう!

「どうやって認知してもらおうか?」「何をすれば行動を起こしてもらえるかな?」「何を伝えれば『あなたに決めました!』と選んでもらえるだろうか?」

それぞれの『関門』にあわせた打ち手が功を奏すると、お客さま(建て主候補)は少しずつ近づいてきてくれます。階段を上るように、着実に近づいてきてもらうには?

【建築家のための戦略&マーケティング -プロデュース会社に頼らずに仕事をとるには-】
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(牧野めぐみ)