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吉田 千遥 さん
就職先:
(卒業後)株式会社魚谷繁礼建築研究所
(経験者として転職)株式会社ひかり工務店
クラス:昼間部 建築設計スタジオ
入学時年齢:20歳
入学前:大学生(文系)
卒業後、意匠設計事務所での経験を経て、デザインに力を入れている工務店へ転職した吉田さんにお話を伺いました。
【デザインファーム(以下、DF)】
吉田さんの現在のお仕事について教えてください。
【吉田さん(以下、吉田)】
デザインファームを卒業した後、意匠設計事務所に3年いたのですが、そろそろ新しいことをやってみようと思い、数ヶ月前に現在の工務店へ転職しました。リノベーション担当として入社して、中古住宅などのリノベーション設計を行なっています。
まだ一通りの流れを掴んでいる最中ですが、お客様の要望からコンセプトを考えてテーマをプレゼンするところからやらせてもらっています。
以前いた設計事務所では自分の考えをお客様にプレゼンをすることはなかったので、初めての経験もありますが楽しいです。
【DF】
設計の経験者として転職されたということですが、新たなことにも挑戦されているのですね。リノベーションにはもともと興味があったのですか?
【吉田】
学生の頃からリノベーションには興味があって、デザインファームを卒業後、最初に就職活動をした時も古い住宅の再生を手掛けているところを探していました。結果、町屋などの伝統住宅の改修を多く手掛けている設計事務所で実務経験を積むことができました。
実際に経験してみて、リノベーションの「古いものの良いところを残しつつ新しいものを加えていく」という部分に魅力を感じて、今回の転職でもリノベーションができるところを選びました。
【DF】
これからリノベーションのプロとしてさらにステップアップできそうですね。
同じリノベーションでも、設計事務所と工務店で違いを感じることはありますか?
【吉田】
設計事務所の場合、工事は外注なので、現場とのコミュニケーションをとるのが大変な分、図面も細かい所まで描くことで設計者の意図やこだわりを現場に的確に伝えることが大切でした。
工務店の場合は社内の工務部に経験のある現場監督がいるので、細部まで図面を描かなくても、ある程度は現場の判断に任せつつ、クオリティーを担保できるところが良いところだと感じています。
どちらが良いと言うことではないのですが、先に設計事務所で細かい図面を描く経験ができたことで、描きすぎない(どこを省略すれば良いか)が分かるので、経験の順番としては良かったと思います。
【DF】
設計事務所で建築の細かいところまでしっかり知ることができたからこそ、設計者として選べる仕事の幅が広がったのですね。
では、転職しても共通してやりがいを感じる時はどんな時ですか?
【吉田】
お客様との関わりの中で、自分の考えたものが「すごいですね」「素敵ですね」と言ってもらえる時は嬉しいですね。「好きなことをして喜んでもらえる」、そこが繋がっているのが楽しいところです。
デザインファームに入る前は文系の大学生で、普通の企業に就職するイメージが全然持てなくて「後悔しないように好きだった建築をやってみよう」とデザインファームに入学したのですが、今「本当に好きなことをできている」という感覚があります。
【DF】
逆に建築設計の実務で大変だな、難しいなと思うことはありますか?
【吉田】
コミュニケーションの取り方、伝え方が難しいなと思っています。
お客様はもちろん、営業や工事の担当など関わる人が多い仕事なので、どこかでうまく伝えられないと形が変わってしまう。
みんな形がないものを想像しながら話しているので、自分はわかっていても言葉足らずで相手に別の意味で捉えられてしまったり、逆に自分も相手の話を勝手に頭の中で補填してしまうこともあるので、イメージを上手に伝えるのが難しいところだと感じています。
【DF】
デザインファームに入る前は文系の大学生だったということですが、仕事をしていて理系ではないことで困ったことなどはありますか?
【吉田】
大学受験の時に数学が苦手で建築学科を諦めたのですが、実際にやってみてこの仕事(意匠設計)が理系だと思ったことは一度もないです。「なんで理系なんだろう?」と思うくらい。
構造計算などで使うことはあるかもしれない(※)ですが自分ですることもないので、数学なんてできなくたっていいと思います。
※意匠設計事務所での構造計算は、構造の専門家(又は担当者)が行うのが一般的です。
むしろ、表現力や文章力、語彙力の方が必要です。
お客様には図面だけ見せても伝わらないし、心に響かない。そちらの方が大事です。
【DF】
意匠設計は理系ではなく文系の仕事といえますね。
最初に「やっぱり建築を勉強してみよう」と思った時は、建築が一般的に理系に分類されていることがハードルになりませんでしたか?
【吉田】
そうですね。「やっぱり建築をやってみよう」と思ったのが大学1年生の時で、その時通っていた大学に建築学科もあったので、受験し直すことも考えていました。でもそれだと理系の勉強からはじめないといけないので受験に1年か2年、そのあと通うのに4年。「就職するまで何年かかるんだ」と思ったし、実際に建築学科の授業を見学してみて「設計事務所にいくなら、これ全部必要ではないな」と思ったんですよね。
そこで、デザインファームなら受験もしなくて良いし「行けるところにすぐ行こう!」と思って入学を決めました。「やってみて違ったら別の道を探そう」と思って飛び込んだ結果、自分にとてもあっていたので大学もスッキリ辞めました。
【DF】
デザインファームで学んで「建築が自分にあっている」と感じてもらえたのは嬉しいです。
どのような時に自分にあっていると感じたのでしょうか。
【吉田】
もともと手を動かすのが好きで、模型や図面を描くのが楽しかったのがひとつです。
それに、生活している中で「この空間、いいな」となんとなく感覚的に感じていたものが、勉強していくにつれて「どうして自分が気になっていたのか」がわかってきた時にそう感じました。
例えば、「開放感があるな」と思った時に、デザインファームでは「どうしてそうなんだろう」ということを一日中考えながら過ごすじゃないですか。それがすごく楽しかったんです。
【DF】
普段から「いいな」と感じていたことの理由がわかって、さらにそれを自分の手で作ることができるのは素敵なことですよね。
実際に仕事に就いてから、デザインファームで学んだことで役立っていることはありますか?
【吉田】
「テーマがあって建築を作る」という流れが、まさにデザインファームでやった設計課題と同じです。それにデザインファームでは設計課題を進めるときに、まず「コト」から考えますよね。「カタチではなくて、そこで起こる出来事から考える」という考え方が、今とても仕事に生きています。
そのやり方が私にあっていたのだろうなと思います。大学の建築学科に入っていたら、続かなかっただろうなって。
【DF】
吉田さんの「得意」「好き」が、建築の世界で見事に発揮されていますね。
設計者としてステップアップしている吉田さんですが、今後はどのような目標をお持ちですか?
【吉田】
設計事務所では木造住宅の改修がメインだったのですが、今はRC造やS造など様々な構造の案件がきているので、どんな依頼がきても自信を持って設計できるようになりたいというのが目標です。
また、今の会社ではリノベーション以外にも新築や店舗設計のチャンスもあるので幅を広げてチャレンジしていきたいです。
RC造:鉄筋コンクリート造
S造:鉄骨造
【DF】
さらなるご活躍をお祈りしています!
では、これから建築を勉強しようと思っている方へメッセージをお願いします。
【吉田】
私のように、建築が理系だからということで躊躇している方もいるかもしれませんが、全く関係ないので、ハードルの低いところから気軽にはじめてみても良いと思います。
建築って堅いイメージがありますが、フタを開けてみれば建物そのものよりも「そこで何をするか」という人間目線で考えることの方がメインなので、もっと身近なものです。
日々の生活の中から考えられることもあるし、「ちょっと気になるな」くらいの感覚ではじめてみても良いと思いますよ。
【DF】
ありがとうございます。それでは最後の質問です。
もし今、入学前の自分自身に会えたら何と声を掛けますか?
【吉田】
「それでいい、その道であっているよ」と言いたいです。
デザインファームに入っていなかったら、今自分が何をしているか想像もつきません。建築って難しいイメージがあったのでやっていけるか不安もあったのですが、思い切ってやってみて正解だったと思います。