卒業生インタビュー vol.40 森本 由希乃さん | デザインファーム建築設計スタジオ

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デザインファーム卒業生 森本 由希乃さん

卒業生インタビュー vol.40

森本 由希乃さん(28歳)
昼間部建築設計スタジオ卒業
就職先:村上建築設計室
入学前:会社員

村上建築設計室にお勤めの森本さんにお話を伺いました。今回は、竣工したばかりの物件を見学しながらインタビューをさせていただきました。

【デザインファーム(以下、DF)】
村上建築設計室にお勤めになってどのくらい経ちますか?

【森本さん(以下、森本)】
この春で4年目に入りました。
所長はデザインファームで講師をしているので学生の時にすでに知っていて、2年生の時に設計課題をみてもらいました。私がうまく言葉で説明しきれないところを「僕はこう思う」と言われたことが自分の感じることにとても近く、すごく感覚的に近いものを感じました。厳しい先生なので学校に行くのが怖くなったこともあるんですけど(笑)その時から直感的に一緒にお仕事させてもらいたいと思っていたんです。
それで、お手伝いさせてもらいたいというお願いをして、最初は模型作りなどをさせてもらい、最終的に採用という形にしていただき今に至ります。

村上建築設計室 作品
戸建てのリノベーション物件を見学させていただきました。お施主様のご要望で柾目を活かして設計されたフローリングと建具類。

【DF】
村上建築設計室は、所長夫婦と森本さんの3人体制で動いていますよね。お仕事の内容としてはどのようなことをされているのですか?

【森本】
私たちの事務所の場合、担当物件を持つ、というやりかたではなく、事務所全員で話し合いながら設計を進めていきます。お施主様との打ち合わせも現場も、基本的には3人で行くようにしています。事務所内のミーティングも、誰かが「今日はこの案件について話し合いましょう。」と相談を持ちかけて3人で話し合うといったスタイルです。

日々の仕事としては、雑務やメール応対などの他に図面を一通り描かせてもらったり、ディテールもできる範囲でなるべく描かせてもらうようにしています。

【DF】
全て3人でということは、森本さんのお仕事内容もかなり広範囲なのですね。

【森本】
そうですね。
やりたいと思っていればやらせてくれることが多いので「なるべく全てやりたい」という気持ちを持って取り組んでいます。もちろん分からないことや自分のキャパシティもあるので、そういった時はお願いしたり、相談したり、所長夫妻の仕事を見ていたりしています。なるべく全て関わろうとしているとはいえ、大事にしていることは「一人で決めない」ということです。自分はこう思う、ということがあったら、それは必ず相談するようにしています。

これも少人数の事務所だからできることなのかもしれませんが、所長夫妻が「自分たちの見える範囲で仕事をしていきたい」「手に取るようにものを考えていきたい」という思いを大事にしているので、私にも手に取るように全てを見せてくれているのだと思います。

【DF】
全体を見ながら仕事ができるというのはとても気持ちがいいですね。
4年目に入って設計事務所での経験も豊富になられたと思います。就職したての頃と変わったことはありますか?

【森本】
自分なりのペースですけど、知識の面はかなり増えたかなと思います。そのおかげで、工務店さんと話す内容も増えたり、以前は聞いているだけだったのが自分の意見を言えるようになったり、所長夫妻にも助かっていると言ってもらえたりして、少しずつ成長しているのかなと思います。

設計の仕事は小さな判断の積み重ねだとも思いますが、最初は気軽に判断できないことが辛かった時期もありました。わからないといっても全てを逐一聞くこともできないし、慎重に判断したくても時間的制約などがあったり。
けれど、何度も図面を描いてはチェックしてもらって、さらに実物が出来上がったところを見て「そうか、こういうところで空気感が繋がるのか」と気がついて、を繰り返していくうちに、神経をつかうことも以前よりは楽しみながらできるようになってきたと思います。

【DF】
実務に就いてから勉強することも多いと思いますが、学校での勉強と実務が結びつくと感じることはありますか?

【森本】
私の場合、学生の時はどちらかというと空間全体を設計することを考えていたのですが、今はディテールをよく考えるようになっています。一見全然違うことをしているように思えるのですが、実はここはすごく連続していると感じています。空間全体を良くするためにはディテールの検討が重要になってくると思います。ただ、学生の時は求められる部分が違ったので直接見えてなかっただけで、今となっては当時何気なく見ていた部分を思い出すことが多々あります。

学生の時に何にこだわるかは人によると思うんですけど、空間全体にしても詳細にしても、まずは自分が気になるところを突き詰めていくことが大事なのかなと思います。ステージが変わっていくと、今度はまた別の要求が出てくるので、それに対して今度は自分がどう答えを出すかということを考えることでさらに視野が広がっていくのかなと思います。

デザインファーム卒業生 森本さん
建具の取っ手や収まりひとつでも空間に影響を与えることを教えてくださいました。

「これが素敵」と思う素直な気持ちを大事にしてそれを蓄積しておくことです。

【DF】
ところで、森本さんはどんなきっかけで建築家をめざしたのですか?

【森本】
もともとは心理学の勉強をしていて、人が障害にぶつかった時にどうしたら楽しく過ごせるのだろう、幸せになれるのだろうということを考えていました。その中でも、民族紛争や国際問題に興味があって、実際にイスラエルに滞在して現地の声を聞いたこともありました。世の中には抗えない事実があるということに直面して、私にできることは何だろうと考えているうちに自分の無力さに気がつきました。そして、今まで自分が考えてきたことは意味のないことだったんじゃないかと混乱して辛くなってしまったこともありました。
そんな時、部屋にカーテンを通して太陽の光が入ってきたんです。それがとても綺麗で、「美しいな、綺麗だな」と、とても心に響いたんです。
その時に、人の心というものは、言葉やカウンセリングで癒すというアプローチももちろんあるけれど、環境によって変えることもできるのだと感じたんです。抗えないことがあっても、美しい光が落ちてきたとか、風が頬に触れたとかそういったことですごく安らいだり、救われる。少なくとも私にとってはそうだと思いました。その時はすでに大学を卒業して就職していたのですが「私はこの仕事がしたい」と思って建築の道に進んでみようと思いました。

【DF】
そして、デザインファームに入学されたのですね。

【森本】
はい。建築の学校を調べているうちにデザインファームを見つけて、最初は「意匠ってなんだろう」と思っていたのですが、これもまた調べているうちに「私のやりたいことはこれじゃないか」と思って。
デザインファームの説明会に参加した時に、先生が私の思うことと歴史の話を結びつけてくれて、「君のその感覚はすごく大事だと思うよ」と言ってくれたんです。「こういう道もあるよね」と誘導してくれたのがとても印象的で、かといっておしつけがましくもなくて。この学校にいってみたいなと思って決めました。

【DF】
自分の感覚を信じて、それが今仕事につながっているというのがとても素敵ですね。
お仕事で楽しいことや逆に辛く感じることはありますか?

【森本】
今はディテールを考えるのが楽しいです。
どういう風に納まっているのかとか、どういう素材を使えばいいのかとか、この素材はどうできているんだろうとか。
影とか奥行き、空気、匂い、見えてくる線の違いなど、最初はよく見えてなかったんですけど、なんども事務所内で問題提起してもらうことで広く色々なところが見えてくるようになってきました。そういうことを考えるのがとても楽しいです。
辛いと感じるのは、現場の要望とお施主さんの要望と私たちのやりたいことと、みんなの要望が違う時にまだ揺れてしまう自分がいることです。どう伝えたらうまく進むんだろうと行き詰まってしまうこともあるのですが、所長から「どういう建物を作っていきたいか、というところをしっかり持っていないといけないよ」と言われてハッとしました。
最終的に何を目指すのかをしっかり持って進めていけば、みんなが納得するものができる、ということを大事にしていきたいと思っています。

村上建築設計室 作品
もともと使われていた手洗いと鏡を利用してデザインされたトイレ。

【DF】
今後はどんな目標がありますか?

【森本】
資格とか独立とか、手段としての目標もありますが、人の心が癒されるものや美しいものを追求していきたいです。
そういうことが最初に建築をやり始めたきっかけでもあるのでそれが目標です。

【DF】
ありがとうございます。最後に、後輩たちへメッセージをお願いします。

【森本】
楽しく粘り強くやることが大事です。
たとえどんなにいい感覚がある人でも、研ぎ澄まされた技術や深い知識には敵わない部分が多くあります。勉強しながらやることが大事かなと思います。
また、仕事についてからももちろんですが、学生の間に自分が「これが素敵」と思う素直な気持ちを大事にしてそれを蓄積しておくことです。
たくさんの人がかかわる仕事なので、いろんな立場の人がいろんな意見を言い合います。その中で何が正しいのかわからなくなる時もあるのですが、「自分はこれがいい」と思うことをしっかり持っているとそれが支えになってくれます。
全然建築と関係のないことでも、それが強みになると思います。

2018年10月取材