コラム「建築家のための戦略&マーケティング」

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vol12. 強みの秘密 -独自資源を探れ!その3-

建築家っていろんな職業の中でも、特に深く「人を考える仕事」ではないでしょうか。
住宅なら住む人について、まるで一生を請け負ったかのように考えるし、商業施設ならそれを運営する人やそこを訪れる人たちの心理まで「そこまでやるの!?」と言われるくらい建築家は考えます。
ものづくりができて、お客さまに「ありがとう」と喜んでもらえて、それが街並みの一部になって周りの人たちも楽しんでくれて・・・本当に、なんて素敵な仕事だろう!とよく思います。きっとあなたもそう思ったから、「建築家」という職業を選んだのですよね?

あなたは「自分って、こういう人間なんだ」を理解し、周囲にもそれを表現できていますか? 「自分は何のために生まれてきたのだろう・・・」というのは、思春期を迎える頃に誰もが一度は考えることですが、「その答えならもう見つかっているよ」という人は、実はそんなにいないのではないでしょうか。

人生はよく旅にたとえられますが、「自分はこういう人間だ」(自己理解)は、旅に出発する前の自分の立ち位置(スタンス)のようなものです。
【強みの秘密 -独自資源を探れ!その1-】  【その2】でみてきたように、「自分にとって当たり前のことを他人がほめてくれる、またマイナスだと思っていたことが強みを生み出す源泉になっている・・・いったい自分とはどういう人間なんだろう?」と深くさぐってみることは、自分の立ち位置(スタンス)を知ることにつながります。

そして自分の立ち位置(スタンス)と、自分はどうありたいのかという目的地(ビジョン)がはっきりわかると、何をしたらいいのか、また何をするべきではないのかが見えてきます。「戦略を立てる」ということは、自分の立ち位置から目的地までの行程を考えるようなものです。そして立ち位置も目的地も、もちろん行程も、ひとりひとり違います。

世の中には様々な方法があり、情報は本屋さんでもネットでもあふれていますが、「こうすれば上手くいく!」的な本を読んでその通りにやっても思うような結果が出ないのは、「立ち位置」がそれぞれ違うからです。たとえ目的地が同じでも立ち位置が違えば、ある人は西に向かい、ある人は東に向かうことになるからです。

昨年大ヒットし社会現象にもなった「アナと雪の女王」ですが、ヒットの理由のひとつに「ありのまま」を認めたいのに認められない心理があります。
「自分ってこういう人間なんだ」がわかっても、それを認めて周囲に表現するには大変な勇気が要ります。「アナ雪」のエルサのように手袋をはめて自分を隠したまま生きている人が、現代にはとても多いのではないでしょうか。

「自分はこれでいい!」と手袋を外して山に氷の城を築いても、ここで終わったらただの引きこもり。孤独に生きるのではなく社会の中で自分を表現し周囲がそれを尊重して、はじめて「ありのまま」を体感することができます。

そのためには大きな決断が必要です。
それまであこがれていた建築家の作品と自分の作品との違い、どうしても埋められない差、論理的には納得できても何となく感じていた違和感も受け入れ、「自分とは違うんだ、あの建築家を目指すのはやめよう」と、自ら方向転換することも必要でしょう。
人によっては、パートナーと役割を分ける、あるいは別々の道を行く等の選択が出てくるかもしれません。かなり苦しい選択ですが、そうした大きな決断により、長い間とらわれていたものから解放され、ようやく自分らしさを取り戻すことができるのだと思います。

そうして自己理解が進みアイデンティティを確立すると、周りの人たちとの違いが以前にも増して見えてきます。するとそれぞれの作る建築の良さを実感でき、「みんな違うんだ、そしてみんな違ってみんないい!」という心境にも至ります。
自分の立ち位置と周りの建築家の立ち位置それぞれを尊重できると、「よく名前が挙がるし競合してるかも?」と思っていた相手が“競合”ではないことに気づいたりもします。さらにその建築家のビジョンにも共感できると、心から信頼できる “仲間”にもなれるでしょう。

毎日の仕事も日常も、人生は「選択」の連続でできています。
大人なら「選択」することには責任が伴います。だから選択して決めることには「不安」も一緒についてきます。
あなたが独立して最初に設計したとき、本当にこのプランでいいのだろうかと不安を感じたことがたぶんありますよね?この施主にとってベストなのだろうか、もしかして別のプランの方が幸せになれるんじゃないかと。もしも「不安なんて微塵も感じない。自分の作る建築は最高だ。」と心底から思える人がいたら、それはとてつもない天才か単なる勘違いか、そのどちらかだと思います。

戦略も同じで、「これでいこう!」と決めるのはすごく怖いことです。それは誰もが思うことで、やっぱりみんな怖いんです。怖いから失敗の確率を減らすためにも、必死で考えて自分で決める(ハラをくくる)しかないのだと私は思います。

「建築家」の生き方は、プロフェッショナルとしての生き方です。
プロフェッショナルの生き方は、設計事務所でスタッフとして働くそれとは全く別物です。
自分の「選択」がそのまま形になってお客さまに引き渡され街の一部になる・・・「社会貢献」と「リスク」を同時に引き受けるのがプロフェッショナル。この怖さを知っている人こそが、プロとして独り立ちしていける人なのではないでしょうか。

そして「建築家」という生き方の素晴らしさは、プライベートな自分と建築家としての自分が限りなく一致するというところにあるのだと思います。
「自分は建築家としてこれで生きていこう!これで世の中の役に立とう!」という覚悟ができたら。
ありのままの自分自身を認めて、自分に正直な生き方を「選択」できたら。
その瞬間から、流されるのではない「あなたの人生」がスタートします。

あなたは建築家としてどんな生き方をしたいですか?
そもそもなぜ建築を選び、そして何を成し遂げたいのでしょうか。
自分の“強み”を生み出す“源泉”を見つけるために、「自分の存在意義は何なのか。自分はどこに行こうとしているのか。」に踏み込んで、今一度深く掘り下げてみるのもいいかもしれませんね。

【参考】
◎「白いネコは何をくれた?」 ―フォレスト出版―
◎「鮎の一生」 ―繊細すぎて生きづらいあなたへ―
http://sensitive33.seesaa.net/article/391693474.html(別ウィンドウが開きます)