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奥山 裕生

【右】建築家:奥山 裕生(おくやま ゆうせい) 1968年生まれ。大阪府出身。2000年より奥山裕生設計事務所主宰。
自然素材を活かし家族の結びつきを大切にしたぬくもりのある家は、住む人から絶大な支持を得ており、メディアでもたびたび紹介されている。
【左】スタッフ:吉田 結子(よしだ ゆいこ) 土曜部建築設計スタジオ卒業。2010年より奥山裕生設計事務所に勤務。
http://www.yusei-arch.com/

今回は土曜部卒業生が勤務している、東京都の「奥山裕生設計事務所」を訪ね、
建築家・奥山裕生さんと、スタッフの吉田結子さんに家創りに対する思いをじっくり聞いてきました。

社会経験のある安心感、それが確かにあります。 社会経験はその人の強みですね。

「お施主様と建築家と工務店、その信頼関係が何よりも大事です。」

【DF】
奥山さんが設計する上で大切になさっていることについて教えてください。
【奥山】
一緒に家創りをしたという実感を、お施主様にも持っていただきたいので、打ち合わせの回数を多くとるようにしています。「決めたことをひとつひとつ積み重ねていって精度を上げていきましょう。そのために打ち合わせをたくさんしましょう。」と。また打ち合わせで全部決めておくので、現場でのトラブルがほとんどないんです。
【DF】
現場でトラブルがないなんて、すごいですね。具体的には、どのように進めるんですか?
【奥山】
やっぱり図面が基本ですね。図面が技術的にきっちり出来ていれば、現場で問題は起きないんですよ。大工さんからわかってないなって思われないように、きちんと納まる図面を描くんです。そうじゃないと信頼関係って築けないですよね。 そのためにも、打ち合わせを十分にして、内容を完璧に詰めておく必要があるんです。たくさん打ち合わせをして十分に納得していただけると、安心して任せてもらえます。それを図面に表現すれば、納まらなくて変更とか、後戻りとか、そういうことは起きないですね。 工務店側から見ても変更がないから工期が伸びることもないし、こちらを信頼してくださるので安く見積もりを出してくれるんですよ。で、結果としてお施主様の利益につながるんです。最終的にお施主様に喜んでもらえればいいわけですから。
【吉田】
事前にきちんと決めておけば、職人さんの仕事はこうで、だから自分のやるべき仕事はこうでと、余裕を持って見られます。そうすると職人さんにもいろいろ教えてもらえるんです。だからさらに勉強になるし、楽しいですね。設計者が描いた図面を命がけで職人さんたちがかたちにしてくれるという関係ですよね。お互いに気持ちよく仕事をするにはどうしたらいいかってことを学びました。そういう仕事の仕方を教えてくれた所長に感謝しています。
【奥山】
いろんな工務店さんとの仕事を経験して、現在はいくつかの良い工務店さんと仕事ができるようになったんですよ。レベルの高い工務店さんだと結果的にお施主様が満足してくれて、竣工してから監督や棟梁も呼んでパーティーを開いてくれたりするんですよ。そういうのも楽しいですね。
【DF】
お施主様と建築家と工務店さんがそれぞれ信頼関係を築いて家創りができるって、すごく素敵なことですね。
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穏やかな口調で楽しそうに建築を語る奥山さん。取材そのものを楽しんでくださいました。

「幼稚園の頃から、ずっと建築家になりたかった。」

【DF】
奥山さんが建築家になろうって思ったのは、いつ頃だったんですか?
【奥山】
幼稚園の頃ですね。その頃からずっと建築をやりたいって思っていて・・・。だから早く18歳になりたいと。18歳になって大学に入るのが楽しみだったんですよ。最初のきっかけはわからないんだけど、幼稚園で2階建ての絵を描いて先生にほめられたことは何となく記憶にあるんですよね。ほめられて嬉しかったのを覚えてます。
大学のときは建築の勉強も楽しかったけど、アルバイトでいろんな事務所も経験しましたね。アトリエとか組織事務所とか。その中で造園の事務所での仕事がおもしろくてそのまま就職したんです。
【DF】
造園の事務所を経てというのは異色ですよね。奥山さんの建築はとても人に優しくて、人を包み込むような暖かさがあります。外部空間も内部空間も全て大切な場所として計算されているように思えますが、その事務所での経験があってのものですか?
【奥山】
そうですね。建築と造園の領域って特にないな、ということがわかったんです。建築家が外構を考えるときにどんな樹を植えたらいいかわからないって話もよく聞くんですけど、建築と造園って境界線を引かないでもっと踏み込んでみたらいいと思うんですよ。そうすると案外簡単なことだったり・・・。
照明も好きで、後から器具を選ぶのではなくて、最初から場所作りとして考えて、積極的に取り入れていくとおもしろいですよね。領域の広さ、自分の領域を広げるということを学びました。
【DF】
照明についてもとても大切に考えていらっしゃいますよね。それはいつ頃からですか?
【奥山】
独立してからです。最初は仕事もポツリポツリでしたから、いろいろ勉強する時間があったんです。材料とか、電磁波の問題とか・・・。忙しくなってしまうとそういう時間もとれなくなるから、時間のあるときに領域を広げておくことも大切ですね。
【DF】
建築家は光をとても大切に考えて計画するけど、それは自然光がほとんどです。奥山さんが夜の灯りを場所作りとして大切に計画するのは、家族の場所ということですか?
【奥山】
そうですね。それにはリビングに自然と家族が集まってくるように、建築家が計画することですよね。それができれば自然にみんな集まってくるし、コミュニケーションもとれると思うんです。居場所を作れたらいいんですよ。ひとつのテーブルに家族みんながつくなんてのは子供が小学生くらいまでで、大きくなったらあちらこちらにいればいいと思うんですよね、居心地のいい場所がそれぞれにあれば。 同じ空間、同じ時間を共有できればそれが家族にとって一番いいんじゃないかな、と思います。広ければいいというものではないし、魅力的な居場所を散りばめることができれば狭くても成立するんです。そういう提案を毎回しています。
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(左)整然とファイリングされたカタログや資料(中)仕事場にも暖かな灯り(右)スタッフ吉田さんのワークスペース

「やりきった、思い残すことはない…お施主様も私自身もそう思える家創り。それができる現在の環境に感謝しています。」

【DF】
吉田さんがこちらの事務所に入ったきっかけは?
【吉田】
最初はオープンデスクだったんですけど、その前に事務所に遊びに行く機会があったんです。同じ土曜部の先輩が勤務していて、遊びに来ていいよってことになって。2年生の時に、クラスのみんなで遊びに行ってまんまとご馳走してもらったり(笑)オープンハウスに連れて行ってもらったり・・・。
【奥山】
オープンデスクのときから優秀だったんですよ。だから、無理してでも来てもらおうかな、とは思っていて。
【DF】
奥山さんはスタッフに対して、すごく暖かい眼差しを持ってくださっていますよね。
【奥山】
お施主様に対して、工務店に対して、それからスタッフ同士、すべてにストレスがないように仕事をするにはどうしたらいいかなという視点で考えるんですよ。そうすると、結局自分が楽なんです。(笑)
【吉田】
スタッフにこんな話、普通はしないだろうって思うようなことも話してくれるんですよ。昔失敗したこととか、仕事の取り方などの経営の話とか。
【奥山】
そうだね、経営の話はよくするね。
【吉田】
経営に関わるような大事なことまで「どう思う?」って意見を求めてくれるので、私も必然的に考えるようになったというか、考えるクセを上手につけてもらえたと思います。
【奥山】
彼女の意識が高いから上手くはまっているっていう部分もあると思いますよ。いくらこちらが期待しても、スタッフの意識が低ければ上手くいきませんしね。
【DF】
こちらに勤め始めて、どのくらい経つんですか?
【吉田】
7月で1年になりました。
【奥山】
もう現場も任せられるんですよ。もともと彼女はモチベーションが高かったんです。だからこの1年間ですごく伸びましたね。最近、彼女が初めて担当した住宅が竣工したんですよ。
【DF】
1年で? それはすごいですね。初めての担当物件が竣工して、どうですか?
【吉田】
あっという間だったんですけど、やりきったという感じで・・・。うちの事務所はさっきの話にもあったように、とにかくたくさん打ち合わせをするんですよ。お施主様もいっぱい要望のある方ですごく勉強になったんですけど、最後の打ち合わせが終わったときに、お施主様が「もうこれで思い残すことはない。すべて話したから、後は着工して住むのが楽しみです。」っておっしゃったんです。そしたらなんだか名残惜しくなってしまったんですが、現場が始まってからはあっという間でした。最初から最後まであっという間の1年間で・・・やりきった、思い残すことはないという気持ちは私もお施主様と同じです。私の家じゃないんですけど、完成した家を見たときのあの何とも言えない気持ち、感動っていったらいいのか何というか・・・
【奥山】
我が子のような、ね。その感動は、何回経験しても同じなんだよね。
【吉田】
家創りをとても楽しんでくださって、竣工後にイベントまでやってくださったんです。
【奥山】
「建てた人に聞いてみよう!建築家との家づくり」(※)っていうイベントで、家を建てようと考えている人を招いて自分の体験した話をするっていうものです。
【DF】
それをお施主様が企画なさったんですか?
【吉田】
そうなんですよ。ありがたいですよねえ。しかも定期的にやりましょうって言ってくださって。
【奥山】
そこでは僕も家創りについていろんな話をするんですけど、事務所の宣伝にはならないようにというスタンスでやっています。建築家に依頼するのが絶対いいというわけではないし、ハウスメーカーが向いている方もいますから。

※「建てた人に聞いてみよう!建築家との家づくり」については、こちらをご覧ください。≫
家を建てようと考えている方が対象ですので、学生の方はご遠慮ください。

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吉田さんの担当物件「経堂の家」2011年5月竣工/photo:齋部 功

「社会経験のある安心感、それが確かにあります。
社会経験はその人の強みですね。」

【DF】
さきほど、吉田さんは意識が高いというお話を伺いましたが、そういう意識の高さを身につけるには、学生時代からどんなことが大切だと思われますか?
【奥山】
学校の外に出る機会を多く持つことかな。いろんな建築家の事務所に遊びに行くだけでもいいと思います。学生って特権なんですよ。学生だと事務所側でも気軽に応じてくれるから、学生のうちにオープンハウスに行って名刺交換したり、オープンデスクにも行ってみるとか、学校の外にどんどん出ることが大切です。つながりを作っておくことですね。学生時代にそれができた人は、就職が決まるのも早いですよ。
【吉田】
でもひとりで行くのはコワイから(笑)最初はクラスのみんなで遊びに行って、それを何回か経験したら設計事務所ってこんな感じなんだってこわくなくなってきて。そうしたら今度は自分で事務所を探して行ってみるようになって・・・それは他の人も同じだったようですね。事務所訪問や就活の情報もみんなで共有しました。そしたら在学中に早々と就職決まった人もいましたね。
【奥山】
デザインファームの学生さんは意識の高い人が多いですよ。
【DF】
吉田さんは土曜部の出身ですよね。土曜部や夜間部って、仕事をしながら勉強している人がほとんどだから、就職した時点では、建築の実務は初めてだけど別のことではプロとしての経験があり、社会人としての実績は積んでいるわけですよね。それってプラスに感じることはありますか?
【奥山】
ありますね。社会経験のある安心感、というのは接していて確かにあります。
【DF】
年齢や別の仕事をしてきたことを気にしてためらっている人には、社会経験があるということはむしろ強みですよと話すんです。
【奥山】
そう思います。だって、マナーとか常識とか設計以外のことまで教えるのはちょっと大変ですから。だから遠回りしているのではなんて、焦りを感じる必要は全くないと思います。それと文系かどうかも関係ないですね。そもそも「建築」が理系に入っていること自体、なんでかなあって。(笑)文系・理系で分けて考えるものではないですから。好きかどうかで考えればいいと思いますよ。
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仕事を終えて夕方からの取材は、心地良い灯りに包まれ和やかに進みました。奥山さん、長時間にわたり様々なお話をどうもありがとうございました。これからも素敵な建築をたくさん創ってください。そして吉田さん、プロとしてますますの成長を期待しています。

取材年月:2011年7月取材