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【建築家のための戦略&マーケティング vol.10】

10. 強みの秘密 -独自資源を探れ!-その1

以前の記事で、お客さまに“3つの質問”をすることで自分自身の強みが見つかる、と解説しました。

すると、「え?そんなとこ、ほめてくれるの?そんなの当たり前なのに・・・」 と、自分にとって普通のことを他人がなぜか評価してくれることに驚くことがあります。

 

◆実例紹介

◎男女二役をこなすモデル : IVAN(アイバン)
http://ameblo.jp/ivan0209/ (別ウィンドウが開きます)

モデルでタレントのIVANさん。メキシコ国籍を持つクォーターで、その端正な顔立ちと抜群のプロポーションを活かしてファッション誌や東京コレクション、TVのバラエティ番組などで活躍しています。
2004年にはパリコレにも出演しているんですね。ショーでの顔はタレントのときとは別人で、超一流のモデルさんです。

彼女(彼?)がすごいのは、男女どちらのファッションも着こなして魅せるということ。
オネエタレントとしての活躍も目立ちますが、ひとつのショーの中で男性モデル・女性モデル両方の役割を演じられる希少な存在です。他のモデルさんには到底マネできません。

彼女を起用する側はおそらく「ひとりで両方をこなしてくれるから助かる!」や「その中性的な魅力がいい」「クォーターだから独特のニュアンスがある」という理由でオファーするのだと思いますが、本人にしてみたら「そんなとこ、ほめてくれるの?そんなの、当たり前なのに。」です。
だって生まれたときからクォーターだし、オネエだから両方の服を着られるし、顔立ちや骨格としてのプロポーションだって生まれつきです。(維持するための努力はまた別の話ですが)

最近ではミュージッククリップにも男女二役で出演したり書籍も出版するなど、今後目を離せない存在として注目されています。自分にしかない資質を使い、見事に仕事をこなしている好例ですね。

◆実例紹介
◎お嬢様芸人 : たかまつなな
http://ameblo.jp/takamatsu-nana/ (別ウィンドウが開きます)

慶應義塾大学の大学生でもあるお笑い芸人のたかまつななさんは、フェリス女学院の中学高校を卒業している、正真正銘のお嬢様。2013年の「ワラチャン! U-20お笑い日本一決定戦」(日テレ)で優勝し、一気に知名度が上がりました。
彼女の得意はなんといっても「お嬢様言葉」を使った独自のネタ。「お嬢様」という他の芸人には真似できない経歴を使ってネタを作り、お客さま(庶民)に笑いを提供しています。

彼女の場合も努力してお嬢様になったのではなく、たまたまそういう家に生まれたわけですね。自分にとって当たり前のことが“源泉(資質)”となり、「お嬢様世界とのズレがおもしろい!」という“強み”(庶民のお客さまにとってどう嬉しいのか)を生み出しています。

フェリスの先生から「絶対に友達や他人を傷付けず、清く正しく品格あるお漫談をやりなさい」と言われ、それを心掛けているそうです。ほとんどが庶民のお笑い芸人の世界で独自のキャラを確立し、徐々にその活躍の場を広げてきています。今後も楽しみな存在ですね。

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◆実例紹介
◎外国人が見た日本

2007年頃から日本を訪れる外国人観光客が増えてきましたね。2013年にはついに1000万人を超えました。彼らはどんなところに感激したり「日本は素晴らしい!」とほめてくれるのか。治安が良いとか食事がおいしいとか高い技術力だとか、いろいろありますが、時折「そんなの、当たり前なのに・・・」と思える部分が出てきます。

それは例えばこんな場面。
「レストランで、満席のときに待つ人のために椅子が準備されていること」
「カフェなどで荷物を置くためのカゴが用意されていること」
「自動販売機が外に置かれている!しかもお札まで対応している!」

これ、日本人にとっては当たり前のことですよね?
でも海外旅行を経験した人なら「そういえば・・・」と思い当たるのではないでしょうか。海外ではどれも当たり前ではありません。
外に椅子を用意しているレストランなんてまず見かけないし、荷物は盗られないよう肌身離さず持っていなければいけないし、自動販売機なんて外に置いたら丸ごと持って行かれてしまいます。

ここに、日本人の(外国人観光客に対しての)“強み”と、それを生み出す“源泉(資質)”が見えてきます。その源泉とは「お客さまに喜んでもらいたい」という気持ち、「おもてなしの心」です。(流行語大賞にもなりましたよね)

「おもてなしの心」が日本人独自の資質であり、その資質が「細かいところまで気を配ってもらって楽しい時間を過ごすことができる」という“強み”(ここでは、外国人観光客にとってどう嬉しいのか)を生み出しています。
さらに「治安の良さ」という諸外国には真似できない日本独自の資源も、「昼も夜も安心して旅を楽しめる」という“強み”を生み出しています。

また記憶に新しいところでは、電車とホームの間に挟まってしまった人を、その場に居合わせた乗客同士で電車を押して救出したという出来事があり、海外から絶賛されました。
あのニュースを見て多くの日本人が、「そんなに絶賛する程のこと?」「ふつう、やるでしょ。」と不思議に思ったのではないでしょうか。

ここにも、自分を後回しにして周囲のために動く、という独自の資質「調和の心」が見てとれます。オリンピックでリレーや団体戦などの競技で特に力を発揮するのは、この資質によるものですよね。戦後日本が短期間でめざましい復興を遂げたのも、この資質によるところが大きいでしょう。

自分では当たり前すぎて気づいていなかった資質。生まれ持ってのものだったり、努力せずにカンタンにできてしまう部分。それこそが、“強み(お客さまにとってどう嬉しいのか)”を生み出す源泉であり、他の人(競合)にはなかなか真似できないことなんです。
強みを生み出す源泉は、個人では「独自の資質」、また企業や国など組織の場合は「独自の資源」と考えるとわかりやすいと思います。

「建築」とは少し離れた内容に感じられるかも知れませんが、自分の想いを表現するという意味で、全ての「ものづくり」(あるいは、生き方)に共通なのでは?と思っています。
自分では当たり前なのに、なぜかほめてもらえるというあなたの部分。あらためて見直してみてはいかがでしょうか。

(牧野めぐみ)

【参考】
◎「白いネコは何をくれた?」 ―フォレスト出版―

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