HOME > デザインファームとは? > スペシャル対談 vol.3
【左】牧野 徹/1954年生まれ。東京理科大学工学部1部 建築学科卒業。一級建築士。
【右】水沼 均/1958年生まれ。東京理科大学工学部1部建築学科卒業。同大学大学院修士課程建築学専攻修了、工学修士。一級建築士。
開校して20年を経て、デザインファームは
プロの建築家から評価される学校へと成長した。
- 【水沼】
- 東京・中野にデザインファームを開校して、2011年で20年目を迎えました。学生や教室はかわったけれど、『建築家をめざす学生が「プロの仕事」を実践的に学べる学校』というデザインファームのコンセプトは、20年前からまったく変わりません。クラスは少人数制で、先生はいつでも学生のすぐそばにいる。常に手を動かして、楽しみながら建築をつくる、というスタイルは昔も今も同じですね。
- 【牧野】
- 開校当初は東京近辺からの学生がほとんどだったけど、今では全国から集まる学校になりましたね。インターネットのおかげで、「建築の意匠設計を集中して勉強できる学校」というデザインファームならではの特色が少しずつ、全国規模で認知されてきたのだと思います。
- 【水沼】
- 認知度が高まっていることは、建築家の世界でも同様に感じますね。就職先としてアトリエと呼ばれる建築家の設計事務所の採用率が確実にアップしているし、建築家からの評価も高い。これは、卒業生の実力が実際の設計の仕事で十分通用しているという証明でもあります。 この20年で大勢のOB・OGが独立して、建築家として活躍を始めました。建築雑誌『住宅特集』の常連建築家になった人もいれば、デビュー作となった設計でいきなり賞をとった人もいる。執筆した本がベストセラーになった人もいますね。
- 【牧野】
- デザインファームで実力を身につけた卒業生たちがプロの世界で活躍し、その実績によって、多くの建築家の方々にデザインファームの名前を覚えていただいている。本当に嬉しいし、ありがたいことですね。
デザインファームの主役は学生一人ひとり。
設計が楽しくて没頭して、気がついたら実力がついている。

- 【牧野】
- 認知度や実績に結びついたのは、独自の工夫があったからだと思う。設計の進め方とか、図面や技術系の指導の仕方、構造力学の計算方法など、学生が短期間で効率よく理解吸収できるように。
- 【水沼】
- 工夫はたくさんありますね。たとえば「模型」。設計するときは常に模型をアイレベルで覗いて検討する。プロの建築家から見れば当たり前のことだけど、学校教育の場でこれをやるのはけっこう大変なんです。でも、これだけは絶対に外せない。ここだけは譲れない。なぜなら、空間のバランスと、人の生活を疑似体験することができる大切な方法だから。
- 【牧野】
- デザインファームの設計課題は、実際の設計と同じように進める。そうは言っても、一足飛びにプロのレベルになれるわけではないから、課題ごとに設定するステップがあります。そのとき、どんなステップを組み立てるかが、カリキュラムの重要なポイント。卒業して数年後には、責任ある立場できちんと結果を出せるよう、確実なステップを積み上げること。それがカリキュラムをつくる僕たちの責任だと考えています。
- 【水沼】
- そのステップを積んでいく過程を楽しめるかどうかも、重要ですね。みんな建築が好きだからここに来ているわけだけど、デザインファームで建築がもっと好きになって、うんと楽しんで、時間が経つのも忘れるくらい没頭して、気がついたらすごく実力がついていた、というのが理想。実際みんな、設計が楽しくて楽しくて途中で打ち切りたくなくて、学校が閉まる時間ギリギリまで残って作業をしています。そんな楽しい雰囲気づくりも工夫のひとつ。それには机の配置も大事で、開校以来、机は常に向かい合わせ。これは学生同士が話しやすいだけでなく、お互いの設計を目にしながら学ぶことも多いから。講義は少しやりにくいけど、これも絶対に変えたくない。この教室のスタイルは、デザインファームの主役は、他でもない学生ひとりひとりなんだというシンボルでもあると思うんです。
デザインファームの原点。そして、将来への責任と役割。
「関係」を見つめ、「こと」を大切にした建築を広めたい。

- 【牧野】
- 2011年3月、東北を中心に大きな震災がありました。この震災をきっかけに、多くの人が日々の生活の大切さ、そして家族の大切さにあらためて気づいたことでしょう。今こそ「家族の関係」を原点に「住宅」を、「人と人との関係」を原点に「建築」を考える時なのではないでしょうか。デザインファームは設立当初から、家族の関係・人と人との関係を考えながら歩んできました。効率優先の建物や、造形だけの建築ではなく、人と人とのつながりやそこで起こる「こと」を大事にしたい、そのための建築でありたいと思うんです。普通、何かをデザインしたいという思いには自己表現の強いエゴがあるものだけど、デザインファームには自分の設計した建築の住み手や利用する人に幸せを感じてほしい、それを自分の喜びとしたい、という人が本当に多い。それこそが自己表現だと。そういう思いをこれからも大切にしていきたいですね。建築設計とは、社会とどのように関わるか、どう貢献するか、その思いの上に成り立つ仕事だから。
- 【水沼】
- そうですね。今回の震災では、直接被害がなかった方でも、いろいろと考えさせられたと思います。自分にできることは何だろう、自分の仕事は世の中にとってはどうなのか、自分の原点は何だろう、と。
- 【牧野】
- 昔から街並みを良くしたいという思いがありました。そのためには一人で頑張るよりも仲間が多い方がいい。だから学校をつくろうと思った。デザインファームの“ファーム“とは、野球でいう“2軍”の意味もあります。プロの世界に送り出す2軍監督のような役目が僕らの仕事です。ベストセラーになった「もしドラ」の中に、“組織は何であるべきか”というくだりがありました。デザインファームがどのように社会に貢献していくか、それは自分の原点とイコールです。
- 【水沼】
- その原点は、今でも少しもブレていない。だから今後いちばん大事なことは、どうすればこの原点をもっと豊かに育てられるか模索し、実践することですね。海外合宿も卒業生のためのサポートシステムも、すべては僕らの原点をより強固なものにするためだと思っています。
- 【牧野】
- サポートシステムは卒業生のためだけではなく、同じく作り手である工務店のためのものでもあります。「設計」と「施工」がお互いに尊重しあってこそ、バランスのいい建築になる。理念を共有するOBを中心に、「こと」を大事にした建築を社会に提供していけたらと思いますね。
- 【水沼】
- サポートシステムはすでに稼働していて、学内での実施コンペや、実際の建築設計プロジェクトも進んでいます。つまり、「教育の場」と「実務の場」との距離がいっそう縮まり、境目がなくなりつつあるんです。建築家として独立したOBが若い力を必要としてデザインファームを訪れる、学生は身近な先輩から設計のアドバイスをもらえて人脈もつくっていける。そんな新たなつながりが始まっていて、若い学生やOBからは大きな可能性を感じます。このように、僕たちでなければできない、僕たちだからこそできる設計教育を続けていくことが、デザインファームの責任であり、こうした活動をもっと広げていかなくてはと思いますね。
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